見どころ:樋口一葉ゆかりの地

千束稲荷神社(東京・台東区) 見どころ
千束稲荷神社(東京・台東区)

東京下町ガイド の「見どころ」カテゴリ では、東京の下町エリアにある観光名所を紹介しています。あなたの東京観光におすすめのスポットを毎回 1 か所取り上げます。

今回取り上げるのは、台東区にある「樋口一葉(ひぐち いちよう)ゆかりの地」です。

樋口一葉(ひぐち いちよう)は、明治時代に活躍した小説家です。彼女は台東区に住んでいたことがあります。そして、彼女の代表作「たけくらべ」でも台東区の神社や寺院が取り上げられています。

この記事では、「たけくらべ」を中心に、樋口一葉ゆかりの場所を紹介します。あなたが東京下町めぐりや浅草観光をする際の参考にしてください。

樋口一葉のゆかりの地

見返り柳

見返り柳(東京・台東区)
見返り柳(東京・台東区)

見返り柳(みかえり やなぎ)は、日本堤の土手から新吉原にかけて続く 衣紋坂(えもんざか)にあった柳の木のことです。衣紋とは、身だしなみを整えるという意味です。

新吉原で楽しい時間を過ごした男性客たちは、この柳の木のあたりで振り返って名残りを惜しみました。そのため、昔の人たちはこの柳の木を「見返り柳」と呼びました。

現在、見返り柳は 吉原大門 交差点(よしわら おおもん こうさてん)に移転しています。

見返り柳は、「たけくらべ」の第 1 章に登場します。

廻れば大門の 見返り柳 いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火うつる三階の騷ぎも手に取る如く

意訳:ここから吉原大門の見返り柳まではかなり距離があるが、お歯黒溝(おはぐろどぶ)に映る灯りで三階の賑やかさが手に取るようにわかる。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

見返り柳の詳細については、次の記事を参照してください。

吉原大門

吉原大門の跡地(東京・台東区)
吉原大門の跡地(東京・台東区)

吉原大門(よしわら おおもん)は、平常時に新吉原に入るための唯一の入口でした。

吉原大門は、「たけくらべ」の第 1 章に登場します。「大門(おおもん)」が吉原大門のことです。

廻れば 大門 の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火うつる三階の騷ぎも手に取る如く

意訳:ここから吉原大門の見返り柳まではかなり距離があるが、お歯黒溝(おはぐろどぶ)に映る灯りで三階の賑やかさが手に取るようにわかる。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

吉原大門の詳細については、次の記事を参照してください。

千束稲荷神社

千束稲荷神社(東京・台東区)
千束稲荷神社(東京・台東区)

千束稲荷神社(せんぞく いなり じんじゃ)は、台東区の竜泉(りゅうせん)にある神社です。

千束稲荷神社は「たけくらべ」の第 2 章や第 4 章に登場します。

「千束神社(せんぞく いなり)」が千束稲荷神社のことです。また、第 4 章は、千束稲荷神社の例大祭のことを述べています。

八月廿日は 千束神社 のまつりとて、山車屋台に町々の見得をはりて土手をのぼりて廓内までも入り込まんづ勢ひ

意訳:8 月 20 日は千束稲荷神社の祭りである。それぞれの町が見栄を張った山車や屋台を出し、日本堤の土手を登って吉原遊廓の敷地内にまで入り込もうという勢いである。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 2 章より抜粋

打つや皷のしらべ、三味の音色に事かゝぬ場處も、祭りは別物、酉とりの市を除けては一年一度の賑ひぞかし、三嶋さま小野照さま、お隣社となりづから負けまじの競ひ心をかしく

意訳:鼓を打つ音や、三味線の音色がいつも聞こえる場所でも、祭りは別物である。酉の市を除くと、一年に一度の賑わいなのだ。三島神社や小野照崎神社など、近所の神社に負けないとする競争心も面白い。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 4 章より抜粋
千束稲荷神社(東京・台東区)
千束稲荷神社(東京・台東区)

千束稲荷神社は「樋口一葉『たけくらべ』ゆかりの神社」と称しています。また、境内には 樋口一葉文学碑(ひぐち いちよう ぶんがくひ)があります。

千束稲荷神社の詳細については、次の記事を参照してください。

三島神社

三島神社(東京・台東区)
三島神社(東京・台東区)

三島神社(みしま じんじゃ)は、台東区の下谷(したや)にある神社です。

三島神社は、「たけくらべ」の第 1 章や第 4 章に次のとおり出てきます。「三嶋神社」や「三嶋さま」が三嶋神社のことです。

三嶋神社(みしまさま)の角をまがりてより是れぞと見ゆる大厦(いへ)もなく、かたぶく軒端の十軒長屋二十軒長や

意訳:三島神社の角を曲がると大きな建物もない。軒先が傾いた十軒長屋(じっけん ながや)や二十軒長屋(にじっけん ながや)が並んでいる。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

打つや皷のしらべ、三味の音色に事かゝぬ場處も、祭りは別物、酉の市を除けては一年一度の賑ひぞかし、三嶋さま 小野照さま、お隣社となりづから負けまじの競ひ心をかしく

意訳:鼓を打つ音や、三味線の音色がいつも聞こえる場所でも、祭りは別物である。酉の市を除くと、一年に一度の賑わいなのだ。三島神社や小野照崎神社など、近所の神社に負けないとする競争心も面白い。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 4 章より抜粋

三島神社の詳細については、次の記事を参照してください。

小野照崎神社

小野照崎神社(東京・台東区)
小野照崎神社(東京・台東区)

小野照崎神社(おのてるさき じんじゃ)は、台東区の下谷(したや)にある神社です。

小野照崎神社は「たけくらべ」の第 4 章に登場します。「小野照さま」が小野照崎神社のことです。

打つや皷のしらべ、三味の音色に事かゝぬ場處も、祭りは別物、酉の市を除けては一年一度の賑ひぞかし、三嶋さま 小野照さま、お隣社となりづから負けまじの競ひ心をかしく

意訳:鼓を打つ音や、三味線の音色がいつも聞こえる場所でも、祭りは別物である。酉の市を除くと、一年に一度の賑わいなのだ。三島神社や小野照崎神社など、近所の神社に負けないとする競争心も面白い。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 4 章より抜粋

小野照崎神社の詳細については、次の記事を参照してください。

鷲神社

鷲神社(おおとり じんじゃ)は、台東区の千束(せんぞく)にある神社です。この神社は、隣の 長國寺(ちょうこくじ)と共同で「浅草酉の市(あさくさ とりのいち)」を開催します。

浅草酉の市は、毎年 11 月の酉の日に行われる、商売繁盛を願う祭です。この祭は江戸時代から続く、浅草の年末の風物詩です。

鷲神社は、「たけくらべ」の第 1 章、第 4 章、第 14 章、さらに第 16 章に登場します。

一家内これにかゝりて夫れは何ぞと問ふに、知らずや霜月酉の日 例の神社 に欲深樣のかつぎ給ふ是れぞ熊手の下ごしらへといふ

意訳:一家総出でその仕事に取り掛かっている。私は「それは何ですか?」と彼らに尋ねてみた。すると、「ご存知ないのですか? 11 月の酉の日に鷲神社で欲深い客たちが買う熊手を作っているのですよ」と答える。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

南無や 大鳥大明神、買ふ人にさへ大福をあたへ給へば製造もとの我等萬倍の利益をと人ごとに言ふめれど、さりとは思ひのほかなるもの

意訳:「南無大鳥大明神。熊手を買う人たちにまで多くの福を与えるのだから、その熊手を作っている私たちにも万倍の利益があるはず」と誰もが言う。しかし、思い通りには行かないものだ。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

打つや皷のしらべ、三味の音色に事かゝぬ場處も、祭りは別物、酉の市 を除けては一年一度の賑ひぞかし、三嶋さま小野照さま、お隣社となりづから負けまじの競ひ心をかしく

意訳:鼓を打つ音や、三味線の音色がいつも聞こえる場所でも、祭りは別物である。酉の市(とりのいち)を除くと、一年に一度の賑わいなのだ。三島神社や小野照崎神社など、近所の神社に負けないとする競争心も面白い。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 4 章より抜粋

此年三の酉まで有りて中一日はつぶれしかど前後の上天氣に 大鳥神社 の賑ひすさまじく

意訳:今年は三の酉(さんのとり)まであった。二の酉は天気に恵まれなかったが、一の酉(いちのとり)と三の酉は天気が良かったため、鷲神社の賑わいはとてもすごかった。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 14 章より抜粋

今日の 酉の市 目茶/\に此處も彼處も怪しき事成りき。

意訳:今日の酉の市はめちゃくちゃだ。ここもかしこも不思議なことになっている。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 16 章より抜粋
鷲神社(東京・台東区)
鷲神社(東京・台東区)

鷲神社の境内には、樋口 一葉に関する、以下の 2 つの石碑があります。

  • 樋口一葉文学碑(ひぐち いちよう ぶんがくひ)
  • 樋口一葉玉梓乃碑(ひぐち いちよう たまづさ の ひ)

樋口一葉文学碑には、「たけくらべ」の第 14 章の浅草酉の市の場面が刻まれています。

また、樋口一葉玉梓乃碑には、樋口 一葉が作家の 半井桃水(なからい とうすい)に宛てた手紙が刻まれています。樋口一葉は半井桃水から小説の指導を受けていました。

鷲神社と長國寺の詳細については、次の記事を参照してください。

弁天院

弁天院(べんてんいん)は、台東区の竜泉(りゅうせん)にある寺院です。

弁天院は、水谷勝隆(みずのや かつたか)という大名が自分の屋敷に弁財天を祀る社を建てたのが始まりです。

弁天院には、約 8,000 平方メートルの大きさの池がありました。この池の中には島があり、その島に弁財天は祀られていました。

弁天院の池は、弁天池(べんてんいけ)や 水の谷の池(みずのや の いけ)と呼ばれていました。

弁天院は、「たけくらべ」の第 10 章に登場します。「水の谷の池」が弁天院のことです。

大音寺前にて珍らしき事は盲目按摩の二十ばかりなる娘、かなはぬ戀に不自由なる身を恨みて 水の谷の池 に入水したるを新らしい事とて傳へる位なもの

意訳:目が不自由なマッサージ師の 20 才の女性が、恋が叶わないのは自分の目のせいだと恨み、最後には弁天院の池に身を投げた。大音寺前において珍しいことといえば、そんな話が新しい事として伝えられるくらいだ。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 10 章より抜粋

弁天院の詳細については、次の記事を参照してください。

太郎稲荷神社

太郎稲荷神社(東京・台東区)
太郎稲荷神社(東京・台東区)

太郎稲荷神社(たろう いなり じんじゃ)は、台東区の入谷(いりや)にある神社です。

「たけくらべ」の主人公の美登利(みどり)には、新吉原の遊女である姉がいます。美登利は姉の仕事が繁盛するよう、毎朝、太郎稲荷神社にお参りしていました。

太郎稲荷神社は、「たけくらべ」の第 6 章に登場します。「太郎様」が太郎稲荷神社のことです。

太郎樣 への朝參りは母さんが代理してやれば御免こふむれとありしに、いゑ/\姉さんの繁昌するやうにと私が願をかけたのなれば、參らねば氣が濟まぬ、

意訳:「太郎稲荷神社への朝のお参りは母さんが代わりに行きますよ。だから、あなたは休んでいなさい」と、母が言いました。しかし、美登利は「いいえ、『姉さんの仕事が繁盛するように』と私が願を掛けたのです。だから、私が行かないと気が済みません」と言いました。

青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 6 章より抜粋

太郎稲荷神社の詳細については、次の記事を参照してください。

大音寺

大音寺(東京・台東区)
大音寺(東京・台東区)

大音寺(だいおんじ)は、台東区の竜泉(りゅうせん)にある寺院です。

この寺院は、近所にある 浄閑寺(じょうかんじ)と共に 投込寺(なげこみでら)として知られています。投込寺とは、吉原遊廓で亡くなった遊女たちを無縁仏として埋葬した寺院のことです。

「たけくらべ」には 龍華寺(りうげじ)という架空の寺院が登場します。そのモデルとなったのが大音寺だといわれています。

物語では、主人公の美登利(みどり)は信如 (しんにょ)に恋をします。その信如は龍華寺の息子という設定です。

それ以外にも、大音寺は、古典落語「悋気の火の玉(りんき の ひのたま)」の舞台となったことでも知られています。

樋口一葉旧居跡碑

樋口一葉の旧居跡(東京・台東区)
樋口一葉の旧居跡(東京・台東区)

樋口一葉旧居後碑(ひぐち いちよう きゅうきょあと ひ)は、台東区の竜泉(りゅうせん)にある記念碑です。

樋口一葉は、1983 年(明治 26 年)の 7 月から1984 年(明治 27 年)の 5 月までこの場所に住んでいました。

一葉記念館

一葉記念館(東京・台東区)
一葉記念館(東京・台東区)

一葉記念館(いちよう きねんかん)は、台東区の竜泉(りゅうせん)にある文学館です。樋口一葉の文学的な業績を称えるために建てられました。

一葉記念館の入館料は大人 300 円、小中高校生は 100 円です。めぐりんバスの一日乗車券を提示すると本人に限り団体料金が適用されます(大人 200 円、小中高校生 50 円)。

一葉記念公園

一葉女史たけくらべ記念碑(東京・台東区)
一葉女史たけくらべ記念碑(東京・台東区)
樋口一葉 記念碑(東京・台東区)
樋口一葉 記念碑(東京・台東区)

あらき薬局

あらき薬局 は、台東区の竜泉(りゅうせん)にある薬局です。

「たけくらべ」の主人公の美登利(みどり)は、姉が務める 大黒屋(だいこくや)という妓楼(ぎろう)の寮に住んでいました。妓楼とは、芸姑や遊女を置いて客を楽しませる店のことです。

現在、あらき薬局のある場所には大黒屋の寮があったとされます。

関連する記事

タイトルとURLをコピーしました