見どころ:浅草寺の二天門

浅草寺(東京・台東区) 見どころ
浅草寺(東京・台東区)

東京下町ガイド の「見どころ」カテゴリ では、東京の下町エリアにある観光名所を紹介しています。あなたの東京観光におすすめのスポットを毎回 1 か所取り上げます。

今回取り上げるのは、台東区にある 浅草寺(せんそうじ)の 二天門(にてんもん) です。

二天門は浅草寺の東門です。雷門(かみなりもん)や 宝蔵門(ほうぞうもん)と比べると、二天門は小さいため地味に感じるかもしれません。しかし、二天門にも他の 2 つの門に負けない歴史があります。

浅草寺の境内には、かつて 東照社(とうしょうしゃ)がありました。東照社は、徳川家康(とくがわ いえやす)を祀る神社です。そして、二天門は、その東照社を守護するための門として建てられました。

この記事では、浅草寺の二天門の詳細を紹介します。あなたが東京下町めぐりや浅草観光をする際の参考にしてください。

なお、この記事は英語版もあります。詳細については、つぎの記事を参照してください。

歴史

浅草寺(東京・台東区)
浅草寺(東京・台東区)

浅草寺によると、二天門 の歴史は 17 世紀までさかのぼります。

その昔、徳川家康(とくがわ いえやす)は、浅草寺を 祈願寺(きがんじ)として大切にしていました。徳川家康は、江戸幕府の初代将軍です。また、この場合の祈願寺とは、江戸幕府が武運長久や一族繁栄を祈願するための寺院のことです。

1616 年(元和 2 年)、徳川家康が亡くなりました。1618 年(元和 4 年)、浅草寺の境内に徳川家康を祀る 東照社(とうしょうしゃ)が建てられました。

1618 年(元和 4 年)、東照社の 随身門(ずいしんもん)として二天門が建てられました。随身門とは、神社を守護する神さまを配置した門のことです。当時は二天門ではなく、随身門の俗称である 矢大神門(やだいじんもん)と呼ばれていました。

当時の二天門には、豊岩間戸命(とよいわまど の みこと)と 櫛岩間戸命(くしいわまど の みこと)の像が安置されていました。この 2 柱は、天照大神(あまてらす おおみかみ)が住む殿舎の門番だった神さまです。

浅草寺の東照社は、1631 年(寛永 8 年)と 1642 年(寛永 19 年)の 2 度に渡り焼失しています。その後、徳川幕府は浅草寺の境内に東照社を再建することを許可しませんでした。

浅草寺の東照社の役目は、近所の 上野東照宮(うえの とうしょうぐう)が引き受けました。上野東照宮は、1627 年(寛永 4 年)に建てられた、徳川家康を祀る神社です。

1868 年(明治元年)、明治政府は 神仏分離令(しんぶつ ぶんり れい)を発令しました。これは、神道と仏教、神さまと仏さま、そして神社と寺院を明確に区別する法律です。

浅草寺は仏教の寺院です。豊岩間戸命と櫛岩間戸命は神道の神さまです。神仏分離令により、浅草寺は、この 2 柱の神さまの像を二天門に安置することはできなくなりました。

1884 年(明治 17 年)、浅草寺はこの 2 柱の像を 浅草神社(あさくさ じんじゃ)に移しました。浅草寺は、代わりに 広目天(こうもくてん)と 持国天(じこくてん)の像を二天門に安置しました。広目天と持国天は、どちらも仏教の守護神です。

二天門に安置された広目天と持国天の像は、もともと神奈川県の鎌倉の 鶴岡八幡宮(つるがおか はちまんぐう)の経蔵にあったものです。浅草寺と鶴岡八幡宮は他にも縁があります。

例えば、浅草寺は、宝蔵門(ほうぞうもん)に仏教の経典「元版⼀切経(げんばん いっさい きょう)」を保管しています。この経典は、もともと鶴岡八幡宮にありました。

宝蔵門の詳細については、つぎの記事を参照してください。

広目天と持国天の像を安置したことを受け、1884 年(明治 17 年)、浅草寺はこの門の正式名称を矢大神門から二天門に変更しました。

1945 年(昭和 20 年)、第二次世界大戦により、二天門の広目天と持国天の像は焼失しました。1957 年(昭和 32 年)、浅草寺は、二天門に 持国天増長天(ぞうちょうてん)の像を安置しました。

この 2 尊の像は、上野の 寛永寺(かんえいじ)の 徳川家綱(とくがわ いえつな)の霊廟にあったものです。徳川家綱は、江戸幕府の第 4 代将軍です。また、寛永寺は徳川将軍家の 菩提寺(ぼだいじ)です。歴代の徳川将軍 15 人のうち、6 人が寛永寺で眠っています。

1946 年(昭和 21 年)、二天門は、国の「重要文化財(建造物)」に指定されました。

見どころ(注目点)

持国天と増長天の像

現在、二天門には持国天と増長天の像が安置されています。増長天と持国天は、仏教の 天部(てんぶ)に住む神さまです。

仏教の考えでは、天界(仏さまが住む世界)は 4 つの階層に分かれています(如来・菩薩・明王・天部)。天部は、その 4 番目の階層のことです。天部には、他宗教から仏教に帰依した神さまが住んでいます。

天部に住む神さまの役割は、仏さま、仏法(仏さまの教え)、そして、仏教の世界を守護することです。また、天部の神さまには、人びとに現世利益(げんぜりやく)を授ける役割もあります。

持国天と増長天は、天部の 四天王 と呼ばれる武闘派の神さまとして知られています。四天王とは、つぎの神さまのことです。

  • 持国天(じこくてん):仏教の世界の東を守護
  • 広目天(こうもくてん):仏教の世界の西を守護
  • 増長天(ぞうちょうてん):仏教の世界の南を守護
  • 多聞天(たもんてん):仏教の世界の北を守護

なお、多聞天は 毘沙門天(びしゃもんてん)の名前でも知られています。参考までに七福神も天部の神さまです。

関連する記事

参考

タイトルとURLをコピーしました