東京下町ガイド の「神社」カテゴリーでは、東京の下町エリアにあるいろいろな神社や寺院をわかりやすく紹介しています。あなたの東京観光におすすめのスポットを毎回 1 つ取り上げます。
この記事では、葛飾区 立石(たていし)にある 熊野神社(くまの じんじゃ)を紹介します。
熊野神社を建てたのは、平安時代の 陰陽師(おんみょうじ)である 安倍晴明(あべ の せいめい)です。安倍晴明が関東で建てた神社は、熊野神社のみです。
熊野神社は、陰陽道 の影響を強く受けています。たとえば、この神社の敷地は正五角形です。これは水害から神社を守る結界といわれています。
それ以外にも、この神社は 熊野信仰(くまの しんこう)の影響を受けています。たとえば、主祭神は 熊野権現(くまの ごんげん)ですし、神紋は 熊野三社(くまの さんしゃ)と同じ 八咫烏(やたがらす)です。
今回の記事では、熊野神社に関する以下の内容をやさしく解説します。
- 歴史
- 祀られている神さま
- 見どころ
- アクセス方法
- その他
この記事を読むことで、熊野神社についてより深く理解できます。熊野神社を訪れる際は、ぜひこの記事を参考にしてください。
由緒(歴史)
熊野神社によると、この神社の始まりは 11 世紀にまでさかのぼります。
10 世紀から 11 世紀の終わりにかけて、安倍晴明(あべ の せいめい)という 陰陽師(おんみょうじ)がいました。陰陽師とは、中国の 陰陽五行思想(いんよう ごぎょう しそう)に基づいて占い、呪術、風水などを行う職業です。
11 世紀の初め、安倍晴明は清らかな土地を求めて旅に出ました。そして、彼が見つけた場所が現在の熊野神社がある地域です。安倍晴明は、この地域に神社を建てました。
安倍晴明は、この神社に 熊野権現(くまの ごんげん)の中から 3 柱(はしら)の神さまを祭りました。熊野権現とは、山岳信仰の 1 つである 熊野信仰 で崇拝されている 12 柱の神さまのことです。
これが熊野神社の始まりです。
熊野神社は中川の中州に位置していたため、かつてこの地域は度重なる水害に悩まされました。神社を水害から守るため、安倍晴明は陰陽道に基づいた結界を神社の周りに張りました。
この結界は、三十間五角(さんじっけん ごかく)と呼ばれています。これは、1 辺が約 55m の正五角形という意味です。
敷地が正五角形であるため、この神社は 五方山 熊野神社(ごほうざん くまの じんじゃ)と名付けられました。現在の正式名称は熊野神社ですが、この神社の公式サイトは、今でも五方山 熊野神社と表記しています。
神さまとご神徳(ご利益)
伊邪那岐命
熊野神社の主神(しゅしん)は、伊邪那岐命(いざなぎ の みこと)です。主神とは、その神社で中心となる神さまのことです。
伊邪那岐命は、妻の 伊邪那美命(いざなみ の みこと)と共に日本列島を構成する島々や多くの神さまを生み出したといわれています。また、伊邪那岐命と伊邪那美命は、どちらも熊野権現の一員です。
伊邪那岐命は、国産みと神産みの神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 夫婦円満(ふうふ えんまん):夫婦が仲良く暮らせる
- 子孫繁栄(しそん はんえい):自分の子どもや孫たちが幸せに暮らせる
- 長寿繁栄(ちょうじゅ はんえい):健康で長生きできる
- 縁結び(えんむすび):良い相手と出会える
- その他
速玉男命
速玉男命(はやたまお の みこと)も熊野神社の主神です。この神さまも熊野権現の 1 柱(はしら)です。
日本神話によると、イザナギは黄泉の国でイザナミと喧嘩別れをしました。その際、イザナギは「イザナギともう会わない」と誓いを立てます。その誓いを固めるためにイザナギは唾(つば)を吐きますが、その唾から生まれたのが速玉男命です。
速玉男命は、離縁の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
事解男命
事解男命(ことさかお の みこと)も熊野神社の主神です。この神さまも熊野権現の 1 柱(はしら)です。
イザナギの唾から速玉男命が生まれましたが、その唾を掃きはらった時に生まれたのが事解男命です。
事解男命は、離縁と学問の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次の通りです。
宇迦之御魂神
熊野神社の境内社(けいだいしゃ)の 稲荷社(いなり しゃ)は、宇迦之御魂神(うか の みたま の みこと)を祀っています。境内社とは、境内にある小さな神社のことです。
宇迦之御魂神は、穀物、農業、そして、芸能の神さまです。また、宇迦之御魂神は、同じく穀物をつかさどる神さまの 稲荷神(いなりしん)と同一視されます。
宇迦之御魂神の主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- 芸事上達(げいごと じょうたつ):音楽、芸術、芸能などが上達する
- その他
菅原 道真
熊野神社の境内社の 天神社(てんじんしゃ)は、菅原 道真(すがわら の みちざね)を祀っています。菅原 道真は平安時代の貴族です。また、学者や政治家としてもとても有能でした。
菅原道真は、学問の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 学業成就(がくぎょう じょうじゅ):学問に関する願いが叶う
- 芸能上達(げいのう じょうたつ):芸能や芸術の才能が開花する
- 除災招福(じょさいしょうふく):あらゆる災いを取り除く
- その他
木之花咲姫神
熊野神社の境内社の 浅間神社(せんげん じんじゃ)は、木之花咲姫神(このはな さくやひめ の みこと)を祀っています。この神さまは、富士山を象徴する、とても美しい神さまです。桜の語源やかぐや姫のモデルとも言われています。
木之花咲姫神は、火と安産と子育ての神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 火難除け(かなん よけ):火に関する災いを避けることができる
- 安産(あんざん):母子ともに健康に出産できる
- 子授け(こさずけ):子どもを授かることができる
- その他
見どころ
八咫烏
熊野神社の神紋(しんもん)は 八咫烏(やたがらす)をデザインしたものです。八咫烏は、日本神話に登場する、3 本足のカラスのことです。また、神紋とは、その神社オリジナルの紋章のことです。
八咫烏は導きの神さまです。その理由は、日本の初代天皇である 神武天皇(じんむ てんのう)が即位前に 神武東征(じんむ とうせい)を行った際、八咫烏が道案内をしたことに由来します。
熊野三社の神紋は八咫烏です。そのため、熊野神社も八咫烏を神紋にしたと考えられます。
熊野神社の場合、正五角形の中に八咫烏が描かれています。八咫烏は熊野信仰を、正五角形は陰陽道をあらわしています。熊野神社の神紋は、熊野信仰と陰陽道との融合を表現したものといえるでしょう。
熊野神社の八咫烏は、賽銭箱、お守り、絵馬などに使用されています。
安倍晴明の結界
熊野神社の境内地は正五角形をしています。これは、安倍晴明が張り巡らせた結界とのことです。なお、正五角形の 1 辺は 約 55m です。
私たちの日常生活で陰陽道の結界の中に足を踏み入れることはまずないと思われます。そのため、とても貴重な経験になるでしょう。
新月夜詣り・満月夜詣り
熊野神社では、新月の夜と満月の夜に特別な祈祷が行われます。それが 新月夜詣り(しんげつ よまいり)と 満月夜詣(まんげつ よまいり)りです。
新月夜詣りでは叶えてもらいたい願いごとを、満月夜詣りでは感謝の気持ちを捧げます。いずれの特別祈祷も 20 分ほどの長さです。また、参加者には、特別な絵馬やお守りなどが配布されます。
夫婦楠
熊野神社の社殿の両脇には、 夫婦楠(めおとくす)と呼ばれる神木が植えられています。夫婦楠は、大きなクスノキで、どちらも樹齢 370 年といわれています。また、その高さもほぼ同じです。
夫婦楠の名前の由来は、この 2 本のクスノキは社殿を挟んで寄り添うように生えているため、仲の良い夫婦を連想させるからです。
夫婦楠は、葛飾区の登録文化財(天然記念物)に指定されています。
境内社
境内社(けいだいしゃ)とは、神社の境内にある小さな神社のことです。熊野神社の境内にもいくつもの境内社があります。それらを 1 つひとつ見学するだけでも楽しいでしょう。
- 稲荷社(いなりしゃ)
- 浅間神社(せんげん じんじゃ)
- 天満宮(てんまんぐう)
- 水神宮(すいじんぐう)
- 稲荷神社(いなり じんじゃ)
- 香取神社(かとり じんじゃ)
本堂の右奥にある稲荷社には、鉄砲狐(てっぽう ぎつね)と呼ばれる、狐をかたどった土人形が奉納されています。
台東区にある 被官稲荷神社(ひかん いなり じんじゃ)でもこれと同じ土人形を奉納する習慣があります。この神社は、三社祭(さんじゃ まつり)で有名な 浅草神社(あさくさ じんじゃ)の境内社です。
被官稲荷神社の詳細については、次の記事を参照してください。
神馬
熊野神社は、境内で 3 頭の 神馬(しんめ)を飼育しています。神馬とは、神が乗るための馬のことです。
環境、費用、そして専門的な知識などの点から、神馬を育てている神社はあまり多くありません。そのため、熊野神社の神馬はとても貴重です。
熊野神社の神馬は、七五三などの祭事だけでなく、併設されている幼稚園の行事でも活躍しています。
さざれ石
熊野神社の手水舎(ちょうずや)の近くに「さざれ石」があります。さざれ石は、もともとは小さな石だったものが、時と共に大きく成長した霊石と言われています。さざれ石は「君が代」の歌詞にも出てくるため、ご存知の人も多いかも知れません。
願掛け撫牛
熊野神社の手水舎(ちょうずや)には、願掛け撫牛(がんかけ なでうし)が奉納されています。
熊野神社の境内社の 1 つに 菅原 道真(すがわら みちざね)を祀る天満宮があります。菅原道真には牛にまつわる逸話がいくつもあります。そのため、天満宮では、牛は神使(神さまのお使い)であると考えています。
願掛けの方法は簡単です。まず、自分の身体の悪い部分をなでます。次にこの撫牛の同じ部分をなでます。これで病気や怪我が治ると信じられています。
羽生結弦ファンの聖地
フィギュア スケートの羽生結弦選手のファンの間では、熊野神社は聖地とされています。そのきっかけは、2015 年、映画「陰陽師」の劇中曲をアレンジした「SEIMEI」を、彼が大会で使用したためです。
一時期は日本全国のみならず、海外からも羽生結弦選手のファンが参拝に訪れたとのことです。現在でも彼に関する願い事を絵馬に書いて奉納するファンが数多くいます。
各種情報
社務所の受付時間
- 午前 9 時から午後 4 時まで
電話番号
- 03-3693-5623
住所
- 〒124-0012 東京都 葛飾区 立石 8-44-31
地図
アクセス(電車)
- 京成線の 青砥駅(東口 2 番出口)から徒歩 10 分
- 京成線の 立石駅 から徒歩 13 分
アクセス(バス)
- 京成タウン バス(有 70)の 立石八丁目 停留所 から徒歩 4 分
- 京成タウン バス(有 57)の 文化会館かつしかシンフォニー ヒルズ 停留所 から徒歩 6 分
- 京成タウン バス(有 70)の 文化会館かつしかシンフォニー ヒルズ 停留所 から徒歩 6 分
- 京成タウン バス(新小52乙)の 文化会館かつしかシンフォニー ヒルズ 停留所 から徒歩 6 分
- 京成バス(新小53)の 文化会館かつしかシンフォニー ヒルズ 停留所 から徒歩 6 分
公衆トイレの有無
- あり(社務所のトイレを借りることができます)