東京下町ガイド の「神社」カテゴリーでは、東京の下町エリアにあるいろいろな神社や寺院をわかりやすく紹介しています。あなたの東京観光におすすめのスポットを毎回 1 つ取り上げます。
今回の記事では、荒川区の南千住(みなみ せんじゅ)にある 素盞雄神社(すさのお じんじゃ)を紹介します。
素盞雄神社の境内には、子育ての銀杏と呼ばれる神木があります。この銀杏の木は、幼い子どもを持つ親たちに人気です。この木には、子育てを祈る絵馬がたくさん掛けられています。
今回の記事では、素盞雄神社に関する以下の内容をやさしく解説します。
- 歴史
- 祀られている神さま
- 見どころ
- アクセス方法
- その他
この記事を読むことで、素盞雄神社についてより深く理解できます。素盞雄神社を訪れる際は、ぜひこの記事を参考にしてください。
由緒(歴史)
素盞雄神社によると、この神社の始まりは 8 世紀にまでさかのぼります。
8 世紀の末、修験道(しゅげんどう)の行者に 黒珍(こくちん)という人物がいました。修験道は、山にこもって厳しい修行を行うことで悟りを得ようとする山岳信仰です。
修験道の開祖は 役小角(えんの おづぬ)ですが、黒珍は役小角の弟子だったといわれています。
黒珍の家の近くには、小さな丘がありました。そして、その丘の頂上には奇妙な形をした石がありました。黒珍はそれを神聖な石と考え、毎日、その石に祈りました。
795 年(延暦 14 年)、黒珍が石に祈りを捧げていると、彼の前に 素盞雄大神(すさのお おおかみ)と 飛鳥大神(あすか おおかみ)が老人の姿で現れました。
この 2 柱(はしら)の神さまは「自分たちを祀りなさい」と言いました。また、これらの神さまたちは「この地の人たちを疫病から守ったり、この地を繁栄させたりします」と約束しました。
黒珍は祠を建て、そこに神聖な石を祀りました。これが素盞雄神社の始まりです。
神さまとご神徳(ご利益)
素盞雄大神
素盞雄神社の主神(しゅしん)は、素盞雄大神(すさのお おおかみ)です。主神とは、その神社で中心となる神さまのことです。
素盞雄大神は、太陽神である 天照大神(あまてらす おおみかみ)の弟です。また、神仏習合では 牛頭天王(ごず てんのう)と同一視されています。
素盞雄大神は、海、嵐、農業の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 除災招福(じょさいしょうふく):あらゆる災いを取り除く
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- その他
飛鳥大神
飛鳥大神(あすか おおかみ)も素盞雄神社の主神です。この神様は、事代主神(ことしろぬし の かみ) や 一言主神(ひとことぬし の かみ)ともいいます。
飛鳥大神は、明智(すぐれた知恵)の神さまです。この神様の主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 大漁追福(たいりょう ついふく):魚がたくさん穫れる
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- その他
宇迦之御魂神
境内社(けいだいしゃ)の 福徳稲荷神社(ふくとく いなり じんじゃ)と 稲荷神社(いなり じんじゃ)は、宇迦之御魂神(うか の みたま の かみ)を祀っています。境内社とは、神社の境内にある小さな社のことです。
宇迦之御魂神は、穀物、農業、そして、芸能の神さまです。また、宇迦之御魂神は、同じく穀物をつかさどる神さまの 稲荷神(いなりしん)と同一視されます。
宇迦之御魂神の主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- 芸事上達(げいごと じょうたつ):音楽、芸術、芸能などが上達する
- その他
菅原道真
境内社の 菅原神社(すがわら じんじゃ)は、菅原道真(すがわら の みちざね)を祀っています。菅原 道真は平安時代の貴族です。また、学者や政治家としてもとても有能でした。
菅原道真は、学問の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 学業成就(がくぎょう じょうじゅ):学問に関する願いが叶う
- 芸能上達(げいのう じょうたつ):芸能や芸術の才能が開花する
- 除災招福(じょさいしょうふく):あらゆる災いを取り除く
- その他
見どころ
瑞光石
瑞光石(すいこうせき)とは、黒珍が祈りを捧げていた奇妙な形の石のことです。この石の正式な名前は「神影面瑞光荊石(しんえいめん ずいこう けいせき)」です。素盞雄神社は、境内に瑞光石を祀っています。
瑞光石は、江戸時代の 1829 年(文政 12 年)にまとめられた本、「江戸近郊道しるべ」でも紹介されています。それによると、地元の人がこの神社の近くを流れる隅田川に橋を掛けようとしました。しかし、この瑞光石の根がその川まで伸びていたため、橋脚が打ち込めなかったとのことです。
また、この神社の周辺には、名前に「瑞光」が付く小学校や公園がいくつもあります。これらは、この瑞光石にちなんだものです。
富士塚(小塚原富士)
富士塚(ふじづか)とは、富士山を模した人工の山や塚のことです。素盞雄神社の境内には、「小塚原富士(こづかはら ふじ)」と呼ばれる富士塚があります。
この富士塚は、江戸時代の 1864 年(元治元年)に、瑞光石のある小さな丘を富士塚として祀ったことから始まりました。
富士塚の頂上には 浅間神社(せんげん じんじゃ)が祀られています。それ以外にも、この富士塚には 20 基もの碑が奉納されています。なお、浅間神社は、富士山を信仰する信仰の中心となる神社です。
普段はこの富士塚への登山はできません。そのため、お参りは麓(ふもと)から行います。ただし、毎年 7 月 1 日に山開きが行われ、この日に限り富士塚へ登ることができます。
子育ての銀杏
素盞雄神社の境内には、「子育ての銀杏(いちょう)」と呼ばれる大きな木があります。この木の年齢は 500 才から 600 才と言われています。幹の周囲は約 3.3m、高さは約 30m です。
この銀杏の木には言い伝えがあります。昔、母乳が出ずに困っていた女性がいました。彼女がこの銀杏の木の皮を煎じて飲んだところ、母乳の出が良くなりました。
それ以来、幼い子どもを持つ親たちは、自分の子供が無事に成長できるよう、この木の周りに米の研ぎ汁をまいてお祈りするようになりました。
現在でも、この木は幼い子どもを持つ親たちに人気です。この木の周りには子育てを祈る絵馬がたくさん掛けられており、その人気の程が伺えます。
地蔵堂
素盞雄神社の 地蔵堂(じぞうどう)とは、江戸時代の地蔵、宝篋印塔(ほうきょういんとう)、庚申塔(こうしんとう)などからなる石塔群のことです。
地蔵堂の地蔵は、1834 年(天保 5 年)に出版された地誌「江戸名所図会(えど めいしょ ずえ)」でも取り上げられています。江戸名所図会は観光ガイドブックのようなものです。当時の江戸の風景や名所旧跡を紹介しています。
宝篋印塔とは、仏教で用いられる呪文の 宝篋印陀羅尼(ほうきょういん だらに)を納めた経塔(きょうとう)のことです。これを礼拝することで、過去に犯した悪事が消えたり、苦しみからまぬがれたり、長寿を得たりできるとされています。
庚申塔は、庚申信仰(こうしん しんこう)に基づく石塔です。庚申信仰によると、私たちの体内には 三尸(さんし)と呼ばれる 3 匹の虫が住んでいます。三尸は、私たちが生まれたときから体内にいるとされています。
庚申(こうしん)の日の夜、私たちが眠っている間に三尸は私たちの体から抜け出します。そして、天帝(てんてい)に私たちが行った悪事を告げ口するのです。
天帝は、罪の重さに応じて私たちの寿命を削ります。そのため、人びとは庚申の日に集まって眠らずに過ごす習慣ができました。これが庚申講です。
庚申の日は 60 日に 1 度めぐってきます。つまり、庚申講は 60 日に 1 度開かれます。庚申講を 3 年間 18 回続けた人が記念に建てたのが庚申塚です。
素盞雄神社で一番古い庚申塔は 1678 年(延宝 6 年)のものです。
手水舎のご神水
表参道の右側には 手水舎(ちょうずや)があります。手水舎は、神さまに参拝する前に手や口を清める設備です。
素盞雄神社の手水舎は、深い井戸(深度 40m)の水を使用しています。50 項目以上におよぶ水質試験の結果、この水は「飲料適合」と判定されました。
そのため、この神社ではこの井戸水をご神水と呼び、飲み水としても参拝者に提供しています。
手水舎の横には湯呑が置いてあり、その場でこのご神水を飲むことができます。また、手水舎の裏にはポンプが設置されており、お水取りができるようになっています。
都内近郊でお水取りできる神社はいくつもあります。ただ、煮沸が必要である場合が多いため、素盞雄神社のようなそのまま飲めるご神水は珍しいでしょう。
桃の祓
神楽殿には「桃の祓(もものはらい)」が奉納されています。この桃の祓が奉納されたのは、2021 年(平成 3 年)の 3 月です。
素盞雄神社によると、桃は邪気をはらう霊木とのことです。日本神話では、イザナギが死者の国から戻る際、追っ手から逃げるために 3 つの桃の実を投げた逸話があります。
桃の祓は 3 つの 撫で桃(なでもも)で構成されています。それぞれの撫で桃の名前は、後顧の祓(こうこ の はらい)、中今の祓(なかいま の はらい)、および、幸先の祓(さいさき の はらい)です。
後顧の祓を撫でると、過去を祓い清めることができます。中今の祓を撫でると、現在を祓い清めることができます。また、幸先の祓をなでると、未来を祓い清めることができるといわれています。
各種情報
社務所の受付時間
- 午前 8 時 30 分から午後 6 時まで(お参りはいつでもできます)
電話番号
- 03-3891-8281
住所
- 〒116-0003 東京都 荒川区 南千住 6-60-1
地図
アクセス(電車)
- 日比谷線の 南千住駅 (南出口)から徒歩 8 分
- JR 線 南千住駅(西出口)から徒歩 8 分
- 常磐線 南千住駅(西出口)から徒歩 8 分
- つくばエクスプレス線の 南千住駅 (西出口)から徒歩 8 分
- 京成線の 千住大橋駅(北出口)から徒歩 8 分
- 日比谷線の 三ノ輪駅(3 番出口)から徒歩 11 分
- 都電荒川線の 三ノ輪橋 から徒歩 11 分
アクセス(さくらバス)
- さくらの 南千住図書館 停留所(停留所の番号:3 番)から徒歩 1 分
アクセス(都営バス)
- 都営バス(草 43)の 千住大橋 停留所 から徒歩 1 分
公衆トイレの有無
- あり(地蔵堂の隣りにあります)