東京下町ガイド の「神社」カテゴリーでは、東京の下町エリアにあるいろいろな神社や寺院をわかりやすく紹介しています。あなたの東京観光におすすめのスポットを毎回 1 つ取り上げます。
今回の記事では、千代田区の神田須田町(かんだ すだちょう)にある 柳森神社(やなぎもり じんじゃ)を紹介します。
この神社の境内社(境内にある、小さな神社)の 1 つに福寿神祠(ふくじゅしん し)があります。この祠に祀られている福寿神(ふくじゅしん)は、「おたぬきさま」の名前で親しまれています。この神さまは、出世と玉の輿のご神徳(ご利益)で有名です。
今回の記事では、柳森神社に関する以下の内容をやさしく解説します。
- 歴史
- 祀られている神さま
- 見どころ
- アクセス方法
- その他
この記事を読むことで、柳森神社についてより深く理解できます。柳森神社を訪れる際は、ぜひこの記事を参考にしてください。
由緒(歴史)
柳森神社によると、この神社の始まりは 15 世紀にまでさかのぼります。
15 世紀の後半、関東地方で活躍した武将に 太田 道灌(おおた どうかん)という人物がいました。彼は江戸城を建てたことで知られています。
1458 年(長禄 2 年)、太田道灌は、京都の 伏見稲荷大社(ふしみ いなり たいしゃ)から 稲荷神(いなりしん)を江戸城に勧請(かんじょう)しました。これが柳森神社の始まりです。
伏見稲荷大社は、稲荷神を祀る神社の総本宮です。また、勧請とは神さまや仏さまの分霊(ぶんれい)を他の場所で祀ることです。分霊しても元の神さまや仏さまに影響はないとされています。
太田道灌が柳森神社を建てた理由は、江戸城の鬼門(東北の方角)を守るためとされています。昔の人たちは、この方角から鬼がやってきて悪いことをすると信じていました。
江戸幕府は、江戸城の鬼門に神社や寺院を立てました。これにより、徳川幕府の安泰と人びとの平安を願ったのです。柳森神社もその神社のひとつです。そのため、江戸幕府は、柳森神社をとても大切にしました。
神さまとご神徳(ご利益)
倉稲魂大神
柳森神社の主神(しゅしん)は、倉稲魂大神(うかのみたま の おおかみ)です。主神とは、その神社でもっとも中心となる神さまのことです。
倉稲魂大神は、穀物、農業、そして芸能の神さまです。また、倉稲魂大神は、同じく穀物を司る神さまの 稲荷神(いなりしん)と同一視されます。
倉稲魂大神の主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- 芸事上達(げいごと じょうたつ):音楽、芸術、芸能などが上達する
- その他
福寿神
境内社(けいだいしゃ)の 福寿神祠(ふくじゅしんし)は、福寿神(ふくじゅしん)を祀っています。境内社とは、神社の境内にある小さな社のことです。摂末社(せつまつしゃ)と呼ぶこともあります。
福寿神祠には、木彫りのたぬきの像が納められています。そのため、福寿神は「おたぬきさん」の名前で親しまれています。
福寿神は、江戸幕府の第 5 代将軍である 徳川綱吉(とくがわ つなよし)の生母の 桂昌院(けいしょういん)が信仰していた神さまです。
この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 玉の輿(たまのこし):結婚によって社会的な地位が上がる
- 出世開運(しゅっせ かいうん):仕事がうまくいく
- 勝負運向上(しょうぶうん こうじょう):勝負に勝てる
- その他
伊弉冉命
境内社の 幸神社(さい の かみ の やしろ)は、伊弉冉命(いざなみ の みこと)を祀っています。夫の イザナギ と共に、日本列島を構成する島々や多くの神さまを生みました。
伊弉冉命は、国産みと神産みの神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 夫婦円満(ふうふ えんまん):夫婦が仲良く暮らせる
- 子孫繁栄(しそん はんえい):自分の子どもや孫たちが幸せに暮らせる
- 長寿繁栄(ちょうじゅ はんえい):健康で長生きできる
- 縁結び(えんむすび):良い相手と出会える
- その他
稚産霊命
境内社の 幸神社(さい の かみ の やしろ)は、稚産霊命(わくむすひ の みこと)を祀っています。稚産霊命は、イザナミが最後に生んだ神さまです。
稚産霊命は、穀物と養蚕の神です。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- 農業守護(のうぎょう しゅご):農業が発展する
- 養蚕守護(ようさん しゅご):養蚕業が発展する
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- その他
倉稲魂命
境内社の 幸神社(さい の かみ の やしろ)は、倉稲魂命(うか の みたま の みこと)を祀っています。倉稲魂命は、柳森神社の主神の 倉稲魂大神(うかのみたま の おおかみ)と同じ神さまです。
倉稲魂命は、穀物、農業、そして、芸能の神さまです。また、倉稲魂命は、同じく穀物をつかさどる神さまの 稲荷神(いなりしん)と同一視されます。
倉稲魂命の主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- 芸事上達(げいごと じょうたつ):音楽、芸術、芸能などが上達する
- その他
誉田別命
境内社の 幸神社(さい の かみ の やしろ)は、誉田別命(ほんたわけ の みこと)を祀っています。
誉田別命は、日本の第 15 代天皇の 応神天皇(おうじん てんのう)を神格化したものです。この神さまは、八幡神(はちまんしん)とも呼ばれています。
誉田別命は、戦いの神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 武運長久(ぶうん ちょうきゅう):戦いでの幸運が長く続く
- 勝負運向上(しょうぶうん こうじょう):勝負に勝てる
- 除災招福(じょさいしょうふく):あらゆる災いを取り除く
- その他
宇気母智神
境内社の 明徳稲荷神社(めいとく いなり じんじゃ)は、宇気母智神(うけもち の かみ)を祀っています。宇気母智神は、柳森神社の主神である 倉稲魂大神(うかのみたま の おおかみ)と同一視されます。
宇気母智神は、穀物、農業、そして、芸能の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- 芸事上達(げいごと じょうたつ):音楽、芸術、芸能などが上達する
- その他
大物主神
境内社の 金刀比羅神社(ことひら じんじゃ)は、大物主神(おおものぬし の かみ)を祀っています。大物主神は、日本の基礎を築きあげた神さまです。もともとは蛇の姿をした祟り神さまだったと言われています。
大物主神は、国造りと農業の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 国土安泰(こっか あんたい):国家の平和と国民の安全を維持する
- 産業振興(さんぎょう しんこう):各種産業が発展する
- 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
- その他
迦具土神
境内社の 秋葉大神(あきば の おおかみ)は、迦具土神(かぐつち の かみ)を祀っています。迦具土神はイザナミから生まれました。その際、イザナミは迦具土神の火が原因で亡くなっています。
迦具土神は、火の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 火難除け(かなん よけ):火に関する災いを避けることができる
- 産業振興(さんぎょう しんこう):各種産業が発展する
- 金運上昇(きんうん じょうしょう):お金に恵まれる
- その他
木之花咲耶姫命
境内社の 富士宮浅間神社(ふじのみや せんげん じんじゃ)は、木之花咲耶姫命(このはな さくやひめ の みこと)を祀っています。
この神さまは、富士山を象徴する美しい女神です。桜の語源やかぐや姫のモデルとも言われています。
木花開耶姫命は、火と安産と子育ての神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 火難除け(かなん よけ):火に関する災いを避けることができる
- 安産(あんざん):母子ともに健康に出産できる
- 子授け(こさずけ):子どもを授かることができる
- その他
多紀理比賣命
境内社の 水神厳島大明神(すいじん いつくしま だいみょうじん)と 江島大明神(えのしま だいみょうじん)は、多紀理比賣命(たぎりひめ の みこと)を祀っています。
この神さまは、スサノオの剣から生まれた 宗像三女神(むなかた さんじょしん)の 1 柱です。
多紀理比賣命は、玄界灘(げんかいなだ)を守護する水の女神です。玄界灘とは、九州の北西部に広がる海域のことです。
この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 航海安全(こうかい あんぜん):安全に航海できる
- 交通安全(こうつう あんぜん):船、車、飛行機など、乗り物が安全に往来できる
- 金運上昇(きんうん じょうしょう):お金に恵まれる
- その他
市寸島比賣命
境内社の 水神厳島大明神(すいじん いつくしま だいみょうじん)と 江島大明神(えのしま だいみょうじん)は、市寸島比賣命(いちきしまひめ の みこと)を祀っています。
この神さまは、スサノオの剣から生まれた宗像三女神の 1 柱です。また、七福神の 弁財天(べんざいてん)と同一視されます。
市寸島比賣命は、水と芸事の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
- 交通安全(こうつう あんぜん):船、車、飛行機など、乗り物が安全に往来できる
- 金運上昇(きんうん じょうしょう):お金に恵まれる
- 芸事上達(げいごと じょうたつ):音楽、芸術、芸能などが上達する
- その他
田寸津比賣命
境内社の 水神厳島大明神(すいじん いつくしま だいみょうじん)と 江島大明神(えのしま だいみょうじん)は、田寸津比賣命(たぎつひめ の みこと)を祀っています。
この神さまは、スサノオの剣から生まれた宗像三女神の 1 柱です。
田寸津比賣命は、玄界灘(げんかいなだ)を守護する水の女神です。玄界灘とは、九州の北西部に広がる海域のことです。
- 航海安全(こうかい あんぜん):安全に航海できる
- 交通安全(こうつう あんぜん):船、車、飛行機など、乗り物が安全に往来できる
- 金運上昇(きんうん じょうしょう):お金に恵まれる
- その他
見どころ
境内社
柳森神社の境内には、7 つの 境内社(けいだいしゃ)があります。境内社とは、神社の境内にある小さな社のことです。摂末社(せつまつしゃ)と呼ぶこともあります。
柳森神社では、境内社ごとに違う神さまを祀っています。そのため、柳森神社をお参りすることで、いろいろなご神徳(ご利益)を期待できます。
また、それぞれの神さまのお使いも狐、狛犬、龍、そして狸とさまざまです。これらのお使いを見るのも楽しみのひとつです。
柳森神社の境内社と祀られている神さまは、次のとおりです。
幸神社(さい の かみ の やしろ)
- 伊弉冉命(いざなみ の みこと)
- 稚産霊命(わくむすひ の みこと)
- 倉稲魂命(うか の みたま の みこと)
- 誉田別命(ほんたわけ の みこと)
福寿神祠(ふくじゅしんし)
- 福寿神(ふくじゅしん)
金刀比羅神社(ことひら じんじゃ)
- 大物主神(おおものぬし の かみ)
水神厳島大明神(すいじん いつくしま だいみょうじん)・江島大明神(えのしま だいみょうじん)
- 多紀理比賣命(たぎりひめ の みこと)
- 市寸島比賣命(いちきしまひめ の みこと)
- 田寸津比賣命(たぎつひめ の みこと)
秋葉大神(あきば の おおかみ)
- 迦具土神(かぐつち の かみ)
明徳稲荷神社(めいとく いなり じんじゃ)
- 宇気母智神(うけもち の かみ)
富士宮浅間神社(ふじのみや せんげん じんじゃ)
- 木之花咲耶姫命(このはな さくやひめ の みこと)
おたぬきさん
柳森神社の「おたぬきさん」とは、境内社の 福寿神祠(ふくじゅしんし)のことです。この名前の由来は、この社にはたぬきの木像が祀られているためです。
もともと福寿神祠は江戸城の内にありました。その時の名前は 福寿稲荷(ふくじゅ いなり)でした。
この福寿稲荷を建てたのは、江戸幕府の第 5 代将軍である 徳川綱吉(とくがわ つなよし)の生母の 桂昌院(けいしょういん)です。
もともと桂昌院は八百屋の娘だったといわれています。しかし、出世を重ねることで最後には将軍の側室にまで登りつめました。
他の奥女中たち(将軍や大名の女中)は、桂昌院の幸運にあやかりたいと考えました。そこで、彼女たちは、桂昌院が大切にしていた福寿稲荷を信仰するようになりました。
1869 年(明治 2 年)、福寿稲荷は柳森神社の境内に移されました。その際、名前が福寿稲荷から福寿神祠になりました。いろいろなご利益がある神社として、今でも福寿神祠は人びとの信仰を集めています。
富士講関係石碑群
手水舎(ちょうずや)の右側には、富士講(ふじこう)に関する石碑がたくさんあります。富士講は、富士山を信仰する民間信仰の 1 つです。江戸時代、町人や農民の間で富士講が流行しました。
富士講の活動には、富士詣(ふじ もうで)がありました。これは。富士山を登山することです。しかし、当時の交通事情を考えると、富士山を訪れることは簡単なことではありません。
富士山を訪れることができない人は、代わりに 富士塚(ふじづか)を参拝しました。富士塚とは、富士山を模した人工の山や塚のことです。
以前は柳森神社の境内にも富士塚がありました。しかし、富士講の人気がなくなるに従い、柳森神社にあった富士塚も壊されました。
柳森神社の富士塚に使用されていた岩や石碑は、今でもそのまま残っています。それが、「富士講関連石碑群(ふじこうかんれんせきひぐん)」です。
柳森神社の富士講関係石碑群は、当時の人びとの生活を知ることができる大切な資料です。そのため、千代田区は、この富士講関係石碑群を指定有形民俗文化財に指定しました。
力石群
柳森神社には、13 個の 力石(ちからいし)があります。力石とは、力だめしに使う大小さまざまな丸い石のことです。江戸時代から明治時代にかけて、若者たちは、この力石を使って力だめしをしました。
柳森神社の力石は、当時の人びとの生活を知ることができる大切な資料です。そのため、千代田区は、この力石碑を指定有形民俗文化財に指定しました。
御衣黄桜
柳森神社の境内の中央には、桜の 1 種である 御衣黄桜(ぎょいこう ざくら)が植えられています。
一般的な桜のソメイヨシノの花びらは淡いピンク色ですが、御衣黄桜の花びらは薄い緑色です。また、花の中心は赤みがかかっています。花が見ごろになるにつれ、より赤くなるのが特徴です。
花手水
柳森神社の社務所には、人がいつでもいるわけではありません。しかし、神社はとてもきれいに手入れされています。花手水(はなちょうず)は、その良い例です。
花手水とは、手水舎(ちょうずや)などに色あざやかな花を浮かべることです。手水舎とは、参拝する前に手や口を清める施設のことです。手水舎は、「てみずや」と読む場合もあります。
柳森神社では、季節によっては紫陽花などが浮かべられいます。柳森神社の花手水は、参拝客の目を楽しませています。
各種情報
社務所の受付時間(開門時間)
- 午前 7 時から午後 5 時まで(この時間以外は門が閉まっており、神社内に入ることができません)
住所
- 〒101-0041 東京都 千代田区 神田須田町 2-25-1
地図
アクセス(電車)
- JR 線の 秋葉原駅(中央改札口)から徒歩 7 分
- 日比谷線の 秋葉原駅(3 番出口)から徒歩 7 分
- つくばエクスプレス線の 秋葉原駅(A1 出口)から徒歩 7 分
- 新宿線の 岩本町駅(A2 出口)から徒歩 3 分
公衆トイレの有無
- なし
柳森神社の近所には、公衆トイレが 2 か所あります。どちらも徒歩 3 分くらいの距離です。
柳森神社を出て左に進むと昭和通りに突き当たります。昭和通りを左に曲がると和泉橋があります。和泉橋を渡ったところに公衆トイレがあります。
柳森神社を出て右に進むと中央通りに突き当たります。中央通りを右に曲がると万世橋があります。万世橋の手前に公衆トイレがあります。