榊神社(台東区)

東京下町ガイド の「神社」カテゴリーでは、東京の下町エリアにあるいろいろな神社をわかりやすく紹介しています。あなたの東京観光におすすめのスポットを毎回 1 つ取り上げます。

今回の記事では、台東区の蔵前にある 榊神社(さかき じんじゃ)を紹介します。

榊神社の以前の名称は 第六天神宮(だいろくてん じんぐう)でした。そのため、今でもこの神社を 第六天榊神社(だいろくてん さかき じんじゃ)と呼ぶ場合があります。

関東地方には、名前に「第六天」を含む神社がいくつかあります。榊神社は、それらの総本宮(そうほんぐう)です。総本宮とは、おおもとの神社という意味です。

今回の記事では、榊神社に関する以下の内容をやさしく解説します。

  • 歴史
  • 祀られている神さま
  • 見どころ
  • アクセス方法
  • その他

この記事を読むことで、榊神社についてより深く理解できます。榊神社を訪れる際は、ぜひこの記事を参考にしてください。

由緒(歴史)

榊神社によると、この神社の始まりは 2 世紀にまでさかのぼります。

第 12 代天皇である、景行天皇(けいこう てんのう)の時代のことです。当時、景行天皇と大和朝廷(やまと ちょうてい)は勢力の拡大を目指していました。

その一環として、景行天皇は、自分の次男の 日本武尊(やまとたける の みこと)に 東国(あずまのくに)を平定するように命じました。これを「東夷征伐(とうい せいばつ)」といいます。

東国とは、現在の関東地方のことです。また、住む人たちを東夷(とうい)と言います。大和朝廷が東国を支配するためには、東夷を自分たちに従わせる必要があったのです。

110 年(景行 40 年)、日本武尊は、東夷征伐に出発しました。その途中、彼は鳥越山(とりごえやま)を通りました。鳥越山は現在の蔵前のことです。

日本武尊は、鳥越山に 2 柱(はしら)の神さまをを祀る神社を建てました。その神さまが 面足尊(おもだる の みこと)と 惶根尊(かしこね の みこと)です。

面足尊と惶根尊は、神世七代(かみのよ ななよ)の第 6 世代の神さまです。神世七代とは、日本神話で天地が作られたときに誕生した 7 世代の神さまのことです。

榊神社は、古くから 第六天神宮(だいろくてん じんぐう)と呼ばれていました。その理由を探るためには、神仏習合(しんぶつ しゅうごう)について知る必要があります。

神仏習合とは、神道と仏教を融合する考えです。この考えによると、日本に昔からいる神道の神さまは、仏教の仏さまや神さまが姿を変えて現れたものです。

神世七代の第 6 世代の神さまである面足尊と惶根尊の場合は、第六天魔王(だいろくてん まおう)が変化した姿とされました。これは、どちらも「六」が共通しているためです。

江戸時代になると、徳川幕府は、第六天神宮のある鳥越山を切り崩すことにしました。その理由は、江戸城を建てるために必要な用土を確保するためです。

1719 年(享保 4 年)、江戸幕府の要請を受け、第六天神宮は鳥越山から柳橋に移りました。

当時、第六天神宮の近くの隅田川沿いには 浅草御蔵(あさくさ おくら)がありました。浅草御蔵は、江戸幕府最大の米蔵です。浅草御蔵の総鎮守として、江戸幕府は第六天神宮を大切にしました。

1868 年(明治元年)、明治政府は 神仏分離令(しんぶつ ぶんり れい)を発令しました。これは、神道と仏教、神さまと仏さま、そして神社と寺院を明確に区別する法律です。

第六天魔王は仏教の神さまであるため、神社では祀ることができなくなりました。第六天魔王を祀る神社の多くは、面足尊と惶根尊を祀る神社に変更しました。

第六天神宮の場合は、榊皇大神(さかき の すめ おおみかみ)を祀る神社に変更になりました。ただし、榊皇大神は第六天魔王のことであり、面足尊と惶根尊のことでもあります。

また、第六天神宮が名前を 榊神社(さかき じんじゃ)に変更したのもこの頃です。

1928 年(昭和 3 年)、榊神社は、蔵前の東京高等工業学校の跡地に移りました。

補足

ここでは第六天魔王について補足します。

仏教には、六道(ろくどう)という考えがあります。六道とは、つぎの 6 つの世界のことです。

  • 天道(てんどう)
  • 人間道(にんげんどう)
  • 修羅道(しゅらどう)
  • 畜生道(ちくしょうどう)
  • 餓鬼道(がきどう)
  • 地獄道(じごくどう)

仏教の考えによると、六道は苦しみと迷いの世界です。私たちは、この六道のいずれかに何度も転生するとのことです。

六道の中で一番上にあるのが天道です。この天道は、上から順に無色界(むしきかい)、色界(しきかい)、そして、欲界(よくかい)の 3 つの世界に分かれます。

欲界は、六欲天(ろくよくてん)とよばれる 6 つの世界に分かれます。六欲天は、上から順につぎのとおりです。

  • 他化自在天(たけじざいてん)
  • 楽変化天(けらくてん)
  • 覩史多天(とそつてん)
  • 夜魔天(やまてん)
  • 三十三天(さんじゅうさんてん)
  • 四大王衆天(しだいおうしゅてん)

他化自在天は、六欲天の最高位で第六天(だいろくてん)ともいいます。ここには天魔(てんま)が住んでいます。天魔とは、仏教の修業を妨げる悪魔のことです。

その名のとおり、第六天魔王は、第六天である他化自在天に住んでいる魔王です。第六天魔王を他化自在天と呼ぶ場合もあります。

祀られている神さまとご神徳(ご利益)

榊皇大神

榊神社の主神(しゅしん)は、榊皇大神(さかき の すめ おおみかみ)です。主神とは、その神社で中心となる神さまのことです。

榊皇大神は、次の神さまと同じと考えられています。

  • 仏教の第六天魔王
  • 神道の面足尊と惶根尊

榊神社によると、この神さまのご神徳(ご利益)は、次のとおりです。

  • 健康長寿(けんこう ちょうじゅ):健康で長生きできる
  • 諸業繁栄(しょぎょう はんえい):各種産業が発展する
  • その他

倉稲魂命

境内社の 七福稲荷神社(しちふく いなり じんじゃ)と 繁盛稲荷社(はんじょう いなり しゃ)は、倉稲魂命(うか の みたま の みこと)を祀っています。

倉稲魂命は、穀物、農業、そして、芸能の神さまです。また、倉稲魂命は、同じく穀物をつかさどる神さまの 稲荷神(いなりしん)と同一視されます。

倉稲魂命の主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。

  • 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
  • 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
  • 家内安全(かない あんぜん):家族が健康で安全に過ごせる
  • 芸事上達(げいごと じょうたつ):音楽、芸術、芸能などが上達する
  • その他

大己貴命

境内社の 事比羅神社(ことひら じんじゃ)は、大己貴命(おおなむち の みこと)を祀っています。大国主命(おおくにぬし の みこと)とも呼ばれます。

因幡の白兎の話で、ウサギを助けた(治療のアドバイスを与えた)のが大己貴命です。そのため、大己貴命は医薬の神さまとしてもみなされるようになりました。

日本神話の物語「因幡の白兎」で、ウサギを助けた(治療のアドバイスを与えた)のが大己貴命です。そのため、大己貴命は医薬の神さまとしてもみなされるようになりました。

大己貴命は、国造り、医薬、そして、縁結びの神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。

  • 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
  • 病気平癒(びょうき へいゆ):病気が治る
  • 夫婦和合(ふうふ わごう):夫婦が仲良く暮らせる
  • その他

豊受姫命

境内社の 豊受神社(とようけ じんじゃ)は、豊受姫命(とようけひめ の みこと)を祀っています。この神さまは、日本の最高神である 天照大御神(あまてらす おおみかみ)の食事を調達する役割を持ちます。

豊受大御神は、衣食住と産業の神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。

  • 五穀豊穣(ごこく ほうじょう):農作物がたくさん穫れる
  • 産業振興(さんぎょう しんこう):各種産業が発展する
  • 商売繁盛(しょうばい はんじょう):商いがうまくいく
  • その他

見どころ

美容と健康のご神徳(ご利益)

榊神社は、榊皇大神、つまり、第六天魔王を祀っています。第六天魔王は、仏教の六欲天(ろくよくてん)の第六天に住む魔王が変化(へんげ)した姿です。

神仏習合(しんぶつ しゅうごう)では、第六天魔王は、面足尊(おもだる の みこと)と惶根尊(あやかしこね の みこと)の兄妹の神さまとされています。

その理由は、面足尊と惶根尊は神世七代(かみのよ ななよ)の第六世代の神さまだからです。昔の人たちは、第六天と第六世代を結びつけたわけです。

面足尊と惶根尊は、どちらも見ため目がとても美しい神さまです。昔の人びとは、これらの美しい神さまにお参りすれば自分たちも美しくなれると考えました。

つまり、榊神社にお参りすれば、あなたも面足尊と惶根尊から美容と健康のご神徳(ご利益)を受け取れるかもしれません。

詳細については、次の記事を参照してください。

浅草文庫跡碑

繁盛稲荷社(はんじょう いなり しゃ)の鳥居の横には 浅草文庫跡碑 があります。鳥居と木に囲まれているため、場所が分かりにくいかもしれません。

現在、榊神社のある場所には 浅草文庫(あさくさ ぶんこ)がありました。浅草文庫は、1874 年(明治 7 年)から 1881 年(明治 14 年)にあった公立の図書館です。

この図書館は、徳川幕府が持っていたいろいろな本を保管していました。その数は 11 万冊から 13 万冊あったといわれています。

下町八福神(健康長寿)

榊神社は、下町八福神(したまち はちふくじん)の 1 つです。下町八福神とは、東京の中央区と台東区にある 8 つの神社のことです。

下町八福神では、それぞれの神社ごとに異なるご神徳(ご利益)があります。榊神社のご神徳は「健康長寿」です。

下町八福神すべてを参拝することを「下町八福神めぐり」や「下町八社福参り」といいます。下町八福神めぐりは、地域おこしの一環として 1981 年(昭和 56 年)に始まりました。

その名のとおり、下町八福神はすべて東京の下町にあります。8 つの神社をめぐることで、下町の名所旧跡を楽しんだり、下町情緒を味わったりできます。

下町八福神の詳細については、次の記事を参照してください。

各種情報

社務所の受付時間

  • 午前 9 時から午後 4 時まで

電話番号

  • 03-3851-1514

住所

  • 〒111-0051 東京都 台東区 蔵前 1-4-3

地図

アクセス(電車)

  • 浅草線の 蔵前駅(A1 出口)から徒歩 3 分
  • 浅草線の 浅草橋駅(A6 出口)から徒歩 5 分
  • JR 総武線の 浅草橋駅(東口)から徒歩 5 分
  • 大江戸線の 蔵前駅(A7 出口)から徒歩 10 分

アクセス(めぐりんバス)

  • 南めぐりんの 柳橋分院入口 停留所(停留所番号:11 番)から徒歩 1 分
  • ぐるーりめぐりんの 環境ふれあい館ひまわり入口 停留所(停留所の番号:23 番)から徒歩 5 分

めぐりんバスは台東区のコミュニティ バスです。台東区を観光する場合、めぐりんバスはとても便利です。めぐりんバスの詳細については、つぎの記事を参照してください。

南めぐりんとぐるーりめぐりんの停留所(乗り場)の詳細については、つぎの記事を参照してください。

アクセス(都営バス)

  • 都営バス(23 区)の 蔵前一丁目 停留所 から徒歩 1 分

公衆トイレの有無

  • 境内にはありません

榊神社の近所には、つぎの公衆トイレがあります。どちらも神社から歩いて 1 分弱です。

  • 須賀橋交番の隣(この交番は、神社の鳥居を出て右に曲がるとあります)
  • 御蔵前 公園(この公園は、神社の裏にあります)

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