樋口一葉ゆかりの地を訪れる

東京下町ガイド の「下町めぐり」カテゴリーでは、東京の下町エリアのおすすめ観光コースを取り上げています。毎回テーマを1 つ選び、ガイドなしでも気軽に楽しめるモデル コースを紹介します。

今回のテーマは「樋口一葉の『たけくらべ』ゆかりの地」です。

樋口一葉は、明治時代に活躍した小説家です。彼女は台東区に住んでいたことがあります。そして、彼女の代表作「たけくらべ」でも台東区の神社や寺院が取り上げられています。

この記事では、「たけくらべ」に登場する 鷲神社(おおとり じんじゃ)と 三島神社(みしま じんじゃ)を取り上げています。どちらも台東区を代表する神社です。

あなたが東京下町めぐりや浅草観光をする際の参考にしてください。

ツアーの概要

今回の東京下町めぐりでは、樋口一葉(ひぐち いちよう)の代表作「たけくらべ」にゆかりの地を訪れます。

樋口一葉は、1983 年(明治 26 年)の 7 月から1984 年(明治 27 年)の 5 月まで台東区の 竜泉(りゅうせん)に住んでいました。そのため、彼女の作品にはこの地域の影響が強く見受けられます。

今回の記事では、鷲神社(おおとり じんじゃ)と 三島神社(みしま じんじゃ)を取り上げます。どちらも樋口一葉の「たけくらべ」に登場する神社です。

それ以外の樋口一葉のゆかりの地については、次の記事を参照してください。

こんな人におすすめ

あなたが以下のいずれかに該当する場合、今回の東京下町めぐりはおすすめです。

  • 浅草地区で 浅草寺(せんそうじ)以外の場所にも行ってみたい
  • 樋口一葉が好き
  • その他

時間の目安

  • 時間の目安:約 1 時間

集合場所と解散場所

  • 集合場所:つくばエクスプレス線の浅草駅
  • 解散場所:日比谷線の入谷駅

訪問場所の一覧

  1. つくばエクスプレス線の浅草駅(A1 出口)
  2. 浅草国際通り
  3. 鷲神社
  4. 長國寺
  5. 竜泉交差点
  6. 樋口一葉の旧居跡の碑
  7. 昭和通り
  8. 三島神社
  9. 日比谷線の入谷駅(4 番出口)

公衆トイレの場所

  • つくばエクスプレス線の浅草駅
  • 日比谷線の入谷駅
  • 鷲神社
  • 金杉公園(三島神社の近所)
  • その他

ツアーの詳細

基礎知識

鷲神社について

鷲神社(おおとり じんじゃ)は、台東区 千束にある神社です。

鷲神社は、毎年 11 月に近所の 長國寺(ちょうこくじ)と合同で「浅草酉の市(あさくさ とりのいち)」を開催します。「浅草酉の市」は、日本で最大規模の酉の市です。

樋口一葉の「たけくらべ」では、鷲神社と浅草酉の市が何度も登場します。それだけこの地域に住む人たちにとって、浅草酉の市は大きな催しだったのでしょう。

鷲神社は、「たけくらべ」の第 1 章、第 4 章、第 14 章、さらに第 16 章に登場します。以下は、その一部です。

一家内これにかゝりて夫れは何ぞと問ふに、知らずや霜月酉の日 例の神社 に欲深樣のかつぎ給ふ是れぞ熊手の下ごしらへといふ

意訳:一家総出でその仕事に取り掛かっている。私は「それは何ですか?」と彼らに尋ねてみた。すると、「ご存知ないのですか? 11 月の酉の日に鷲神社で欲深い客たちが買う熊手を作っているのですよ」と答える。青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

南無や 大鳥大明神、買ふ人にさへ大福をあたへ給へば製造もとの我等萬倍の利益をと人ごとに言ふめれど、さりとは思ひのほかなるもの

意訳:「南無大鳥大明神。熊手を買う人たちにまで多くの福を与えるのだから、その熊手を作っている私たちにも万倍の利益があるはず」と誰もが言う。しかし、思い通りには行かないものだ。青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

鷲神社の詳細については、次の記事を参照してください。

三島神社について

三島神社(みしま じんじゃ)は、台東区 下谷にある神社です。

三島神社は、「たけくらべ」ではあまり登場しません。しかし、近所の 千束稲荷神社(せんぞく いなり じんじゃ)の例大祭に絡んで三島神社が登場します。

打つや皷のしらべ、三味の音色に事かゝぬ場處も、祭りは別物、酉の市を除けては一年一度の賑ひぞかし、三嶋さま 小野照さま、お隣社となりづから負けまじの競ひ心をかしく

意訳:鼓を打つ音や、三味線の音色がいつも聞こえる場所でも、祭りは別物である。酉の市を除くと、一年に一度の賑わいなのだ。三島神社や小野照崎神社など、近所の神社に負けないとする競争心も面白い。青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 4 章より抜粋

三島神社の詳細については、次の記事を参照してください。

ルートの解説

つくばエクスプレス線の浅草駅(A1 出口)

今回の集合場所は、つくばエクスプレス線の浅草駅(A1 出口)です。浅草駅の改札を出て左に進むとこの出口があります。

浅草駅の A1 出口を出たら左に曲がります。すぐ目の前に浅草国際通りがあるので、ここは右に曲がります。

浅草国際通り

浅草国際通りを北に向かって歩きます。この辺りは観光客がそれほどいないため、ゆったりと歩くことができます。

つくばエクスプレス線の浅草駅(A 出口)

浅草国際通りを 3 分ほど歩くと、つくばエクスプレス線の浅草駅の A 出口があります。この出口は、浅草駅の改札を出て右に曲がったところにあります。

浅草駅の A 出口はエレベーターやエスカレーターがありません。年配の方などは、A1 出口を使うことをおすすめします。A1 出口ならエレベーターやエスカレーターを使うことができます。

今回は、浅草駅の A 出口を通り過ぎてさらに国際通りに沿って進みます。

鷲神社

つくばエクスプレス線の浅草駅(A1 出口)から浅草国際通り沿いを 8 分ほど歩くと、鷲神社(おおとり じんじゃ)が右手に見えてきます。

樋口一葉文学碑と樋口一葉玉梓乃碑

鷲神社の境内の右側には、樋口一葉に関する、以下の 2 つの石碑があります。

  • 樋口一葉文学碑(ひぐち いちよう ぶんがくひ)
  • 樋口一葉玉梓乃碑(ひぐち いちよう たまづさ の ひ)

樋口一葉文学碑には、「たけくらべ」の第 14 章の浅草酉の市の場面が刻まれています。

また、樋口一葉玉梓乃碑には、樋口一葉が作家の 半井桃水(なからい とうすい)にあてた手紙が刻まれています。樋口一葉は半井桃水から小説の指導を受けていました。

大熊手

鷲神社の入口では大きな熊手があなたを出迎えてくれます。熊手には、幸運や金運をかき集めるという願いが込められています。

鷲神社は、毎年 11 月の酉の日に「浅草酉の市(あさくさ とりのいち)」を開催します。この大熊手はそのときに新しいものに置き換えられます。

浅草酉の市の詳細については、次の記事を参照してください。

なでおかめ

鷲神社の拝殿では、「なでおかめ」があなたを出迎えてくれます。この顔をなでると、さまざまなご神徳(ご利益)があるといわれています。

「なでおかめ」のご神徳(ご利益)は、なでる場所によって異なります。以下は公式サイトからの抜粋です。

  • おでこ:賢くなる
  • :先見の明が効く
  • :金運がつく
  • 右の頬:恋愛が成就する
  • 左の頬:健康になる
  • :災いを防ぐ
  • :物事が丸く収まる(顎から時計回りになでる)
その他

鷲神社の社務所には給水機があります。また、休憩するためのベンチも用意されています。暑い日の参拝には、このような気遣いがとてもりがたいです。

長國寺

鷲神社の鳥居を出たら右に曲がります。浅草国際通りをさらに北へ 1 分ほど歩くと 長國寺(ちょうこくじ)に着きます。

江戸時代、鷲神社は長國寺の一部でした。1868 年(明治元年)、明治政府が神仏分離令を発行したため、鷲神社は長國寺から独立しました。

引用元:国立国会図書館の「江戸切絵図(今戸箕輪浅草絵図)」

江戸時代の地図を見ると、長國寺と鷲神社(鷲明神)が同じ場所にあったことがわかります。

竜泉 交差点

長国寺を過ぎて、さらに浅草国際通りを北に進むと 竜泉交差点(りゅうせん こうさてん)に着きます。この交差点の目印は、薬局の 竜泉薬品(りゅうせん やくひん)と 一葉記念館(いちよう きねんかん)の案内板です。

今回は、この交差点を右に曲がります。

樋口一葉の旧居跡の碑

竜泉交差点から 1 分ほど歩くと 樋口一葉旧居後碑(ひぐち いちよう きゅうきょあと ひ)があります。

樋口一葉は、1983 年(明治 26 年)の 7 月から1984 年(明治 27 年)の 5 月までこの場所に住んでいました。

竜泉交差点

樋口一葉旧居後碑を後にしたら、竜泉交差点に引き返します。交差点を渡った後、そのまままっすぐ進みます。

昭和通りの下谷三丁目 交差点

竜泉交差点から 5 分ほど歩くと昭和通りの下谷三丁目 交差点に着きます。三島神社は昭和通りの反対側にあります。昭和通りを渡るためには、歩道橋や横断歩道を使います。

下谷三丁目 交差点を渡ったら、民泊の Wind House の左横の通りを進みます。そのまま道なりに 3 分ほど歩くと 三島神社(みしま じんじゃ)に着きます。

三島神社

三島神社(みしま じんじゃ)は、下谷三丁目 交差点から徒歩 3 分ほどのところにあります。

三島神社は、樋口一葉の「たけくらべ」の第 1 章に次のとおり出てきます。

三嶋神社(みしまさま)の角をまがりてより是れぞと見ゆる大厦(いへ)もなく、かたぶく軒端の十軒長屋二十軒長や

意訳:三島神社の角を曲がると大きな建物もない。軒先が傾いた十軒長屋(じっけん ながや)や二十軒長屋(にじっけん ながや)が並んでいる。青空文庫の樋口一葉「たけくらべ」第 1 章より抜粋

「大厦(たいか)」は大きな建物を指します。「三島神社の角を曲がると大きな建物もなく」といった意味でしょうか。江戸時代の地図で確認すると、三島神社の周囲は山林や土手などを表す緑色になっています。

引用元:国立国会図書館の「江戸切絵図(根岸谷中辺絵図)」
雷井戸

三島神社の鳥居をくぐると、左手に「雷井戸(かみなり いど)」があります。昔、雷(雷神)がこの地に落ちた際、三島神社の神主が雷をこの井戸に封じ込めて懲らしめたとのことです。

花手水(はなちょうず)

雷井戸の隣には手水舎(ちょうずや)があります。手水舎とは、参拝する前に手や口を清める施設のことです。手水舎は、「てみずや」と読む場合もあります。

三島神社では、手水舎を季節の花で飾る、花手水(はなちょうず)を楽しむことができます。今回訪れたときは、龍神が白い花で飾られていました。

同じ台東区の神社では、下谷神社(したや じんじゃ)や元三島神社(もと みしま じんじゃ)でも花手水を楽しむことができます。これらの神社の詳細については、つぎの記事を参照してください。

日比谷線の入谷駅

三島神社を参拝した後、入谷三丁目 交差点に戻ります。昭和通りを南に 4 分ほど歩くと日比谷線の入谷駅(4 番出口)に着きます。

これで今回の東京下町めぐりは終了です。お疲れさまでした。

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