東京下町ガイド の「東京下町めぐり」カテゴリでは、東京の下町エリアのおすすめ観光コースを取り上げています。毎回テーマを1 つ選び、ガイドなしでも気軽に楽しめるモデル コースを紹介します。
今回のテーマは「浅草神社(あさくさ じんじゃ)の 兼務社(けんむしゃ)」です。この場合の兼務社とは、浅草神社が管理する小さな神社のことです。
浅草神社は境内や境外に 8 つの兼務社がありますが、今回は以下の 2 つを取り上げます。
- 被官稲荷神社(ひかん いなり じんじゃ)
- 浅草富士浅間神社(あさくさ ふじ せんげん じんじゃ)
この記事では、浅草神社とその兼務社の見どころとアクセス方法を紹介します。あなたが東京下町めぐりや浅草観光をする際の参考にしてください。
この記事は英語版もあります。詳細については、次の記事を参照してください。
ツアーの概要
今回の東京下町めぐりでは、台東区にある以下の 4 つの社寺を訪れます。
- 浅草神社(あさくさ じんじゃ)
- 被官稲荷神社(ひかん いなり じんじゃ)
- 浅草富士浅間神社(あさくさ ふじ せんげん じんじゃ)
- 浅草寺(せんそうじ)
これらの社寺は近くに位置しており、気軽に訪れることができます。
浅草寺が含まれている理由ですが、浅草神社と浅草寺は隣接しているからです。浅草神社に行く場合、浅草寺の境内を通る必要があります。
こんな人におすすめ
あなたが以下のいずれかに該当する場合、今回の東京下町めぐりはおすすめです。
- 浅草エリアで浅草寺以外の場所にも行ってみたい
- 芸人御用達の神社に興味がある
- 安産と子育ての神さまをお参りしたい
- 美容の神さまをお参りしたい
- 富士塚が好き
- その他
時間の目安
- 時間の目安:約 30 分
集合場所と解散場所
- 集合場所:浅草神社・浅草寺
- 解散場所:浅草富士浅間神社
訪問場所の一覧
- 浅草寺
- 浅草神社
- 被官稲荷神社
- 浅草寺のゲゲゲの鬼太郎像とウルトラマン像
- 浅草富士浅間神社
公衆トイレの場所
- 浅草寺
- 富士公園(浅草警察署の裏)
- その他
浅草寺の周辺のコンビニエンス ストアは、トイレの貸し出しをしていないので注意してください。
ツアーの詳細
基礎知識
兼務社
兼務社(けんむしゃ)は、専属の神職がいない神社のことです。そして、その神社の社務(神社の仕事)は、他の神社の神職が行います。
今回の東京下町めぐりで訪れる浅草富士浅間神社と被官稲荷神社は、浅草神社の兼務社です。これら 2 つの神社に専属の神職はいません。例大祭などの特別な日は、浅草神社の神職が出張してきます。
通常、浅草富士浅間神社と被官稲荷神社の社務所には人がいません。これら 2 つの神社のご朱印やお守りをいただく場合、浅草神社の社務所で対応してもらいます。
浅草寺
浅草寺(せんそうじ)と 浅草神社(あさくさ じんじゃ)は、とても深いつながりがあります。
浅草寺の本尊(ほんぞん)は、聖観世音菩薩(しょう かんぜおん ぼさつ)です。本尊とは、その寺院で中心となる仏さまのことです。
浅草寺の聖観世音菩薩の像は、628 年(推古 36 年)に漁師の兄弟が隅田川で見つけたといわれています。その兄弟の名前は、次のとおりです。
- 檜前浜成(ひのくま はまなり)
- 檜前武成(ひのくま たけなり)
当時の地元の郷士(ごうし)であった 土師真中知(はじ まなかち)は、自宅に聖観世音菩薩の像を祀る寺院を建てました。郷士とは、武士の身分を持ちながら農業に従事する人のことです。
これが浅草寺の始まりです。
浅草寺の詳細については、次の記事を参照してください。
浅草神社
12 世紀の終わりごろ、土師真中知の子孫は聖観世音菩薩からお告げを受けました。お告げの内容は、「浅草寺の創建に寄与した 3 人を郷土神(きょうどしん)として祀るように」というものです。
郷土神とは、特定の地域や土地にゆかりの深い神さまを指します。その地域全体の守護や繁栄を担当する存在です。
お告げに従って、土師真中知と檜前兄弟の子孫たちは、自分たちの先祖である以下の 3 人を祀る神社を浅草寺の隣に建てました。
- 土師真中知(はじ まなかち)
- 檜前浜成(ひのくま はまなり)
- 檜前武成(ひのくま たけなり)
これが浅草神社の始まりです。
浅草神社の詳細については、次の記事を参照してください。
被官稲荷神社
被官稲荷神社(ひかん いなり じんじゃ)は、浅草神社の境内にある小さな神社です。
被官稲荷神社を建てたのは、浅草の町火消の親分である 新門辰五郎(しんもん たつごろう)という人物です。
新門辰五郎の妻が病気になった際、彼は京都の 伏見稲荷大社(ふしみ いなり たいしゃ)で彼の妻のために祈りました。伏見稲荷大社は、 稲荷神(いなりしん)を祀る神社の総本宮(おおもとの神社)です。
新門辰五郎の妻が快復したため、彼は伏見稲荷大社にとても感謝しました。1855 年(安政 2 年)、彼は伏見稲荷大社と同じ稲荷神を祀る神社を浅草に建てました。
これが被官稲荷神社の始まりです。
被官稲荷神社の詳細については、次の記事を参照してください。
浅草富士浅間神社
浅草富士浅間神社(あさくさ ふじ せんげん じんじゃ)は、浅草神社から徒歩 5 分ほどの場所にある小さな神社です。
浅草富士浅間神社が具体的にいつ、誰によって建てられたのかは分かっていません。しかし、1671 年(寛文 11 年)ごろの江戸の地図にはすでにその名前が載っています。
浅草富士浅間神社は、木花開耶姫命(このはな さくやひめ の みこと)を祀っています。この神さまは、富士山を象徴する存在です。
浅草富士浅間神社の詳細については、次の記事を参照してください。
今回のルートの解説
浅草寺
今回の集合地点は 浅草寺(せんそうじ)です。浅草寺の広い境内には、さまざまな仏さまや神さまが祀られています。以下は、その代表例です。
聖観世音菩薩
慈悲の仏さまである 観音菩薩(かんのん ぼさつ)は、多くの人びとの苦しみや願いを聞くため、相手に応じて 33 通りの姿に変化(へんげ)するといわれています。
聖観世音菩薩(しょう かんぜおん ぼさつ)は、観音菩薩が変化する前の姿です。聖観世音菩薩の特徴は、人間の見た目に非常に近いことです。
淡島明神
淡島明神(あわしま みょうじん)は、特に女性のための神さまとして有名です。婦人病の治癒、子授けや安産、さらには縁結びのご神徳(ご利益)があります。
淡島堂と淡島明神の詳細については、次の記事を参照してください。
カンカン地蔵尊
カンカン地蔵尊は、銭塚地蔵堂(ぜにづか じぞうどう)の境内に祀られている仏さまです。カンカン地蔵尊に塩をお供えし、石で叩くと金運が良くなるといわれています。
銭塚地蔵堂とカンカン地蔵尊の詳細については、次の記事を参照してください。
浅草神社
浅草寺を参拝したら、浅草神社(あさくさ じんじゃ)に向かいましょう。浅草神社の場所は、浅草寺の本堂を正面に見たときに右側にあります。
三社権現
浅草神社の主神(しゅしん)は、三社権現(さんじゃ ごんげん)です。主神とは、その神社で中心となる神さまのことです。
三社権現は、浅草寺の創建のきっかけとなった以下の 3 人を郷土神として神格化したものです。
- 土師真中知(はじ まなかち)
- 檜前浜成(ひのくま はまなり)
- 檜前武成(ひのくま たけなり)
郷土神とは、特定の地域や土地にゆかりの深い神さまを指します。その地域全体の守護や繁栄を担当する存在です。
社殿
浅草神社の社殿は、江戸幕府の第 3 代将軍である、徳川家光(とくがわ いえみつ)が 1649 年(慶安 2 年)に寄進したものです。370 年以上も前の建物がそのまま残っていることに感銘を受けます。
夫婦狛犬
夫婦狛犬(めおと こまいぬ)は、浅草神社の鳥居をくぐって右側に奉納されています。2 匹の狛犬が仲良く並んでいる姿は、とても愛らしい印象があります。
浅草神社によると、夫婦狛犬には、以下のご神徳(ご利益)があるとのことです。
- 夫婦円満(ふうふ えんまん):夫婦が仲良く暮らせる
- 縁結び(えんむすび):良い相手と出会える
- 恋愛成就(れんあい じょうじゅ):恋愛ががうまくいく
- その他
神木
浅草神社の本殿を正面に見て右側に 槐(えんじゅ)の木が植えられています。浅草神社は、この木をご神木としています。
浅草神社によると、檜前兄弟は隅田川から拾い上げた聖観世音菩薩の像を槐の切り株に安置したとのことです。そのため、浅草神社では槐の木を神社に縁のある木として大切にしています。
被官稲荷神社
浅草神社の次は 被官稲荷神社(ひかん いなり じんじゃ)に向かいましょう。被官稲荷神社は、浅草神社の社務所の先にあります。
狛狐
被官稲荷神社は、倉稲魂命(うか の みたま の みこと)を祀る神社です。この神さまは、穀物と農業の神さまである 稲荷神(いなりしん)のことです。
昔から浅草は歌舞伎や大衆芸能で知られています。稲荷神のご神徳(ご利益)の 1 つに「芸事上達」があります。そのため、被官稲荷神社は歌舞伎役者や芸人に人気があります。
被官稲荷神社には、歌舞伎役者が奉納した狛狐(こまきつね)がいくつもあります。これを見るだけでも、歌舞伎役者がこの神社を信仰してきたことが伺えます。
扁額の狐
個人的に気に入っているのが、鳥居の 扁額(へんがく)の狐です。扁額とは、神社の名前が書いてある額のことです。
被官稲荷神社には 3 つの鳥居があります。扁額に狐がいるのは、社殿に一番近い鳥居です。もう 1 つの鳥居がすぐ手前にあるため、この扁額の狐は見づらいかも知れません。
浅草寺のゲゲゲの鬼太郎像
被官稲荷神社を後にしたら、浅草富士浅間神社(あさくさ ふじ せんげん じんじゃ)に向かいます。浅草寺の本堂と浅草神社の間の歩道を進みます。
浅草神社を過ぎると、右側に植え込みがあります。その植え込みの中にゲゲゲの鬼太郎の登場人物やウルトラマンの石像があります。
浅草寺にこのような石像がある理由は不明です。インターネットで検索しても、具体的な由来を知ることができませんでした。
富士通り
浅草寺の本堂と浅草神社の間の歩道をさらに進むと、言問通り(ことどい どおり)に着きます。言問通りを渡った先が 奥浅草(おくあさくさ)と呼ばれるエリアです。
富士通り は、上の写真の中央にある道路です。
富士通りを 5 分ほど歩くと浅草富士浅間神社に着きます。
浅草富士浅間神社
浅草富士浅間神社は、富士信仰(ふじ しんこう)に基づく神社です。富士信仰は、富士山を信仰する民間宗教です。富士信仰は、江戸時代にとても人気がありました。
木花開耶姫命
浅草富士浅間神社は、木花開耶姫命(このはな さくやひめ の みこと)を祀っています。この神さまは、富士山を神格化した存在です。
木花開耶姫命は、火と安産と子育ての神さまです。この神さまの主なご神徳(ご利益)は、次のとおりです。
- 火難除け(かなん よけ):火に関する災いを避けることができる
- 安産(あんざん):母子ともに健康に出産できる
- 子授け(こさずけ):子どもを授かることができる
- その他
木花開耶姫命はとても美しい女神といわれています。そのため、神社によっては、この神さまのご神徳(ご利益)として「美の向上」を掲げてところもあります。
「美しい神さまを参拝することで、その美しさにあやかりたい」という気持ちは、今も昔も変わりません。
富士塚
富士塚(ふじづか)とは、富士山を模した人工の山や塚のことです。
富士山を信仰する人たちにとって、富士山を参拝することはとても深い意味を持ちます。しかし、江戸時代は交通事情が悪かったため、富士山を訪れることはとても大変でした。
そこで、人びとは富士山の代わりに富士塚を登山しました。
北めぐりん(浅草まわり)の 浅草警察署前 停留所
浅草富士浅間神社を参拝した後は、歩いて浅草寺に戻ってもいいですし、奥浅草を散策するのも良いでしょう。
あなたが浅草寺や浅草駅に戻りたい場合、めぐりんバスがおすすめです。
めぐりんバスは台東区が運営するコミュニティ バスです。1 回の乗車料金は 100 円と格安ですし、10 分から 15 分間隔で運行しているため、とても便利です。
浅草富士浅間神社から 1 分ほど歩いた所に 北めぐりん(浅草まわり)の 浅草警察署前 停留所(停留所の番号:20 番)があります。
このバスに乗ると、浅草寺を経由して東武伊勢崎線の浅草駅まで行くことができます。