この記事では、素盞雄神社(すさのお じんじゃ)を紹介します。
素盞雄神社は、東京の荒川区にある、古い神社です。この神社は、日比谷線の南千住駅から徒歩 8 分のところにあります。墨田区に架かる、千住大橋からも徒歩数分の距離にあります。
素盞雄神社の主祭神(中心となる神さま)は、戦いの神さまである、素盞雄大神(すさのお おおかみ)などです。この神さまのご神徳(ご利益)は、厄除け、家内安全、五穀豊穣、その他です。
素盞雄神社を建てたのは、修験者の黒珍(こくちん)です。黒珍は、素盞雄大神と飛鳥大神のお告げに従い、この神社を建てました。
この神社の境内に富士塚があります。この富士塚は、黒珍が素盞雄神社を建てるきっかけとなった瑞光石があります。
素盞雄神社の境内には、子育ての銀杏と呼ばれる神木があります。この銀杏の木は、幼い子どもを持つ親たちに人気です。この木には、子育てを祈る絵馬がたくさん掛けられています。
なお、この記事は英語版とやさしい日本語版もあります。詳細については、つぎの記事を参照してください。
由緒(歴史)

素盞雄神社によると、この神社の始まりは 8 世紀にまでさかのぼります。
その昔、黒珍(こくちん)という人がいました。黒珍は、修験道(山岳信仰の 1 つ)の開祖である、役小角(えんの おづぬ)の弟子です。
黒珍の家の近くには、小さな丘がありました。そして、その丘の頂上には変わった形の石がありました。黒珍はそれを神聖な石と考え、毎日、その石に祈りました。
黒珍が石に祈っていると、彼の前に素盞雄大神(すさのお おおかみ)と飛鳥大神(あすか おおかみ)が現れました。
この 2 柱(はしら)の神さまは「自分たちを祀りなさい」と言いました。また、これらの神さまたちは「この地の人たちを疫病から守ったり、この地を繁栄させたりします」と約束しました。
795 年(延暦 14 年)、黒珍は祠を建て、そこに神聖な石を祀りました。これが素盞雄神社の始まりです。
神さまとご神徳(ご利益)
素盞雄神社の主祭神は、素盞雄大神(すさのお おおかみ)と飛鳥大神(あすか おおかみ)です。
素盞雄大神(すさのお おおかみ)
素盞雄神社の主祭神(中心となる神さま)は、素盞雄大神(すさのお おおかみ)です。素盞雄大神は、太陽神である天照大神(あまてらす おおみかみ)の弟です。また、神仏習合では牛頭天王(ごず てんのう)と同一とされています。
素盞雄大神は、戦いと農業の神さまです。主なご神徳(ご利益)は、厄除け、家内安全、五穀豊穣、その他です。
この神さまの詳細については、つぎの記事を参照してください。
飛鳥大神(あすか おおかみ)
飛鳥大神(あすか おおかみ)も素盞雄神社の主祭神です。七福神の恵比寿天(えびすてん)や事代主神(ことしろぬし の かみ)と同一視されています。
飛鳥大神は、明智(すぐれた知恵)の神さまです。主なご神徳(ご利益)は、大漁追福、商売繁盛、家内安全、その他です。
この神さまの詳細については、つぎの記事を参照してください。
宇迦之御魂神(うか の みたま の かみ)
境内社(境内にある小さな神社)の福徳稲荷神社(ふくとく いなり じんじゃ)と稲荷神社(いなり じんじゃ)は、宇迦之御魂神(うか の みたま の かみ)を祀っています。この神さまは稲荷神(いなりしん)とも呼ばれます。
宇迦之御魂神は、穀物と農業の神さまです。主なご神徳(ご利益)は、五穀豊穣、商売繁盛、家内安全、芸事上達、その他です。
この神さまの詳細については、つぎの記事を参照してください。
菅原道真(すがわら の みちざね)
境内社の菅原神社(すがわら じんじゃ)は、菅原道真(すがわら の みちざね)を祀っています。この神さまは、天満大自在天神(てんまん だいじざい てんじん)とも呼ばれます。
菅原道真は、学問と至誠(とても誠実であること)の神さまです。主なご神徳(ご利益)は、学業成就、厄除け、病気平癒、その他です。
この神さまの詳細については、つぎの記事を参照してください。

見どころ
瑞光石(ずいこうせき)

素盞雄神社の境内には、神社が建てられるきっかけとなった石が祀られています。この石の正式な名前は「神影面瑞光荊石(しんえいめん ずいこう けいせき)」です。その通称が「瑞光石」です。
この瑞光石は、江戸時代の 1829 年(文政 12 年)にまとめられた本、「江戸近郊道しるべ」でも紹介されています。それによると、地元の人がこの神社の近くを流れる隅田川に橋を掛けようとしました。しかし、この瑞光石の根がその川まで伸びていたため、橋脚が打ち込めなかったとのことです。
また、この神社の周辺には、名前に瑞光が付く小学校や公園がいくつもあります。これらは、この瑞光石にちなんだものです。
富士塚(小塚原富士)

素盞雄神社の境内には、小塚原富士と呼ばれる富士塚があります。江戸時代の元治元年(1864 年)、瑞光石があった小高い塚を富士塚として祀ったのが始まりです。この富士塚には浅間神社の他に 20 基もの奉納碑があります。
普段、この富士塚を登ることはできません。そのため、お参りは麓から行います。なお、毎年 7 月 1 日にお山開きが行われ、この日はこの富士塚に登ることができます。
素盞雄神社の富士塚は、当時の人びとの生活を知ることができる大切な資料です。そのため、荒川区は、この富士塚を記念物(史跡)に指定しました。
子育ての銀杏(いちょう)

素盞雄神社境内には、子育ての銀杏と呼ばれる大きな木があります。この木の年齢は 500 才から 600 才と言われています。幹の周囲は約 3.3m、高さは約 30m です。
この銀杏の木には言い伝えがあります。昔、母乳が出ずに困っていた女性がいました。彼女がこの銀杏の木の皮を煎じて飲んだところ、母乳の出が良くなりました。
それ以来、幼い子どもを持つ親たちは、自分の子供が無事に成長できるよう、この木の周りに米の研ぎ汁をまいてお祈りするようになりました。
現在でも、この木は幼い子どもを持つ親たちに人気です。この木の周りには子育てを祈る絵馬がたくさん掛けられています。
地蔵堂

江戸時代の地蔵、宝篋印塔(ほうきょういんとう)、庚申塔(こうしんとう)などからなる石塔群です。この地蔵は、1834 年(天保 5 年)に出版された地誌、「江戸名所図会」でも取り上げられています。また、一番古い庚申塔は 1678 年(延宝 6 年)のものです。
宝篋印塔とは、仏教で用いられる呪文の宝篋印陀羅尼(ほうきょういん だらに)を納めた経塔(きょうとう)のことです。これを礼拝することで罪障(過去に犯した悪事)が消えたり、苦しみからまぬがれたり、長寿を得たりできるとされています。
庚申塔は、庚申信仰に基づく石塔です。庚申信仰では、人びとの体内には三尸(さんし)とよばれる虫が住んでいると考えれていました。60 日に 1 度めぐってくる庚申の日に眠ると、この三尸が体外に抜け出し、天帝にその宿主の罪悪を告げ寿命を縮めるとのこと。
そのため、人びとは庚申の日に集まって眠らずに過ごす習慣ができました。これが庚申講です。そして庚申講を 3 年間 18 回続けた人が記念に建てたのが庚申塔です。
ご神水

表参道の右側には手水舎(ちょうずや)があります。手水舎は、神さまにお祈りする前に手や口を清めるところです。
素盞雄神社の手水舎は、深い井戸(深度 40m)の水を使用しています。50 項目以上におよぶ水質試験の結果、この水は「飲料適合」と判定されました。そのため、この神社ではこの井戸水をご神水と呼び、飲み水としても参拝者に提供しています。
手水舎の横には湯呑が置いてあり、その場でこのご神水を飲むことができます。また、手水舎の裏にはポンプが設置されており、お水取りができるようになっています。
都内近郊でお水取りできる神社はいくつもあります。ただ、煮沸が必要である場合が多いため、素盞雄神社のようなそのまま飲めるご神水は珍しいでしょう。
桃の祓(もものはらい)

神楽殿には「桃の祓(もものはらい)」が奉納されています。この桃の祓が奉納されたのは、2021 年(平成 3 年)の 3 月です。
素盞雄神社によると、桃は邪気をはらう霊木とのこと。日本神話では、イザナギが死者の国から戻る際、追っ手から逃げるために 3 つの桃の実を投げた逸話があります。
桃の祓は 3 つの「撫で桃(なでもも)」のことです。それぞれの撫で桃の名前は、後顧の祓(こうこのはらい)、中今の祓(なかいまのはらい)、および、幸先の祓(さいさきのはらい)です。
後顧の祓を撫でると、過去を祓い清めることができます。中今の祓を撫でると、現在を祓い清めることができます。また、幸先の祓をなでると、未来を祓い清めることができます。
新型コロナ ウィルスの感染予防のため、現在(2022 年 7 月時点)は撫で桃に触ることができません。
各種情報
社務所の受付時間
- 午前 8 時 30 分から午後 6 時まで(お参りはいつでもできます)
電話番号
- 03-3891-8281
住所
- 〒116-0003 東京都 荒川区 南千住 6-60-1
地図
アクセス(電車)
- 日比谷線の 南千住駅 (南出口)から徒歩 8 分
- JR 線 南千住駅(西出口)から徒歩 8 分
- 常磐線 南千住駅(西出口)から徒歩 8 分
- つくばエクスプレス線の 南千住駅 (西出口)から徒歩 8 分
- 京成線の 千住大橋駅(北出口)から徒歩 8 分
- 日比谷線の 三ノ輪駅(3 番出口)から徒歩 11 分
- 都電荒川線の 三ノ輪橋 から徒歩 11 分
アクセス(さくらバス)
- さくらの 南千住図書館 停留所(停留所の番号:3 番)から徒歩 1 分
アクセス(都営バス)
- 都営バス(草 43)の 千住大橋 停留所 から徒歩 1 分
公衆トイレの有無
- あり(地蔵堂の隣りにあります)
参考

